ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.25(2007/10/27〜28) J

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(Update:2007/11/01)

 

【あとがき−寄稿:ノリクラでの3シーズン】

肩の小屋と位ヶ原山荘で3シーズン過ごしてきたスタッフの方、今シーズンでノリクラを離れる予定で、ノリクラで過ごした3シーズンを振り返り、ノリクラを降りる前日にその想いを綴っていただきました。さて、彼はこの3シーズンでどんな風にノリクラを感じ取ったのでしょうか?


乗鞍岳 肩の小屋での生活3シーズン目が終わった 3シーズンこの山で起きたことを見てきた 今年は冬の乗鞍岳位ヶ原山荘での生活も経験した
毎年 毎年 何度見ても同じ風景なんて1回としてなく 同じ紅葉も同じ天気も 雲も 風も 気温も 全然違う 
でも 何よりも同じでなかったのは僕自身の山を見る 思いが変わって行ったと思う
好きな花 好きな場所 好きな天気 好きな空 どんどん どんどん 変わって行く
そんな自分に時々驚く
今になってこの山のどんな姿が好きかと聞かれたら きっと答えられない
雨も霧も お天気も 雷も 吹雪も 好きになれたと思う
冬にはダイヤモンドダストだってある 太陽の周りに真丸の虹が出ることだって
夜 池に溜まった雲に 月の明かりで虹が出ることだって 天の川だって
ブロッケンだって 雲と太陽をよく見れば会いに行ける そんな所だ

そんな所で3シーズン生活できたことがこの先 僕にはとても大切な物になって行く
肩の小屋標高2780メートル 人が生活するにはちょっと 高いそんな小屋
でもそこには 千葉でわ見ることが出来ない 風景 聞くことが出来ない静けさ
入ることの出来ない 雲の中 会えない花 会えない動物がいる 
外国旅行に行くような 違う生活があって 違う気候があった

色々な人にも会った 毎日毎日 肩の小屋を通って山に登る人たち
写真を担いでいる人 山に登るのさえ初めての人 死ぬ前に1度はと思い登る人
100名山最後の人 毎年の恒例行事のおばあちゃん 連続で8日間登ったおじさん
ツアーで来る人 若い人 おじいちゃん おばあちゃん 赤ちゃん 子供
好きな人と手を繋いでいる人 1人1人違う
でも どんなに違っていても目指す所は同じ 山の中へ消えていく

天気が良かったらみんな良い顔
天気が悪いと 顔も曇り気味
でも僕は天気も雨で 風も強い日にびしょびしょで登るそれでも楽しそうな顔して
「いやー大変でしたよ」って笑っている人が好きだったな
そんな顔見てるとその中にあるささいな事に気がつきたくなる
風速20メートルの風や 下から上えと吹き上げる風
雲の中にすっぽり入って真っ白で50メートル先が見えない
そんな日もある でもそれはそれで感動的だって僕は思う
山の上以外で何処にそんな所って

でもどんなに天気が悪くって 辛い顔してる人でもきっと山に登って何かをもらって帰っているんだろう
みんな みんな 何かは分からないけどもらってるんだろう
だから 山 すごい又山に登りに行きたくなる 登った人だったら分かるんだろう
山ですれ違う人 こんにちわって優しく声かける もう少しだ がんばれって
小屋で意気投合して 一緒に登っていく人だっている
町ではすれ違う人にこんにちわって言うことはない
でもこんにちわって自然に言い合うことが出来る
一歩一歩ざっざっざって歩いていればそのうち一番高いところに居る自分がある
そんなのって凄くいい そんなのを近くで見守れたことが凄く嬉しかった
小屋を過ぎていく人に こんにちわ お疲れ様って 言えるのが嬉しかった

僕は今年で山小屋での生活終わりになる 
次は山でもらった物を糧にして次の場所で生活して行こうと思う
そしていつか又来たい
山は山だから ずっとそこに居てくれる
3000メートルの山は人には壊すことが出来ないから
ずっとそこに居てくれてまたただいまって言える日が来ると良いな
 夜の星 月の上がる瞬間 鳥が3000メートルの山を越えていく 蝶も長い旅をする 
明日山を降りる 忘れたくても忘れられない日々になった
いろんな人に出会わせてくれてありがとう
いろんな顔見せてくれてありがとう
ずっとずっと 何かをあげていってくださいな
では 又いつか

 

肩の小屋でも位ヶ原山荘でも夕食の後片付けなどが終わるとすぐさま外に飛び出し「夜遊び」に出かけます。月明かりで山頂まで登ったり、とにかくここにいるのが大好きだった彼がノリクラを卒業しますが、いつかまた帰ってきたとき、どんな風に変化しているか楽しみです。3シーズンお疲れ様でした。

 

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