ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.15(2010/08/21〜22) A
【大雪渓に到着】
シャトルバスの車窓から眺める光景以上に、大雪渓エリアは紺碧の青空が広がっています。
今日はスコップを持参して − この時期はバーン整備が必須 |
雪渓のバーンコンディションも日を負うごとに悪くなって行きます。融雪と凍結を繰り返すわけですから、表面の凹凸や再氷結による氷の柱の析出など、雪というよりも氷が柔らかくなったといった表現に近いこの時期の雪渓では、バーン整備が欠かせない状態です。
大雪渓入口にある肩の小屋口バス停には夏スキーに訪れるスキーヤー以外にも、山頂登山に出発する方がここで下車されるケースも多く見られます。特に早い時間帯ではスキーヤーよりも登山の方が多いときもあります。
これほどコントラストのはっきりした快晴に包まれた日は、一年を通して見てもそんなにたくさんお目にかかることはできず、今日初めてノリクラにお越しになった方は幸運ともいえるでしょう。
あちらの山並みは... |
目の前に聳える剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳の姿はもちろんのこと、遠景の風景にも目を移すことを忘れてはなりません。
ご覧のように遠景の山並みが青空に浮かぶ様子は、空気の澄んだ朝しか見られないもの。これから秋にむかうと空気の澄んだ日が多くなって、このような風景にお目にかかることができるケースは増えてくるはずです。
「ノリクラから富士山は見られますか?」というご質問はよくありますが、残念ながらノリクラから富士山を見ることはできません。乗鞍岳は剣ヶ峰など23からなる峰々の総称で、その中に富士見岳という山があります。こちらの山頂からは南アルプスの北岳の傍らにほんの少しだけ富士山の姿を見ることができますが、それもほとんど「写真判定の世界」といっても良いほどで、肉眼ではまず確認することは困難でしょう。
それでも昔の人は「富士見岳」と命名したほどですから、その時代の人はよほど視力が良かったと推測できます。
タクシーから降り立ったこちらのグループ。気温は16℃。強い日差しが差し込むものの全く暑さを感じさせず、それどころか、あわてて長袖を着込む様子が見られます。
そんな様子からタクシーの運転手の方がウインドブレーカーを差し出す様子も見られるほど...このエリアで色々な乗客を乗せてきたタクシーの方から見ると、こんなサービスも当たり前なのかもしれません。
準備万端で山頂に向けて出発します。
【雪渓下部 T】
ここからは雪渓下部の様子をお伝えします
昨年同時期より一週間早い大雪渓入口 2009 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.14(2009/08/12〜15) A ↓ |
昨年同時期の大雪渓入口 2009 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.15(2009/08/22〜23) A ↓ |
大雪渓入口から見た雪渓下部の様子を昨年の画像と比較します。右上は昨年と同時期のもので明らかに今年のほうが多く、左上はその一週間前のもので今年よりやや少ない状態であることがわかります。そのため、今年は昨年よりも一週間以上遅い雪解けの推移を見せていることがわかります。
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昨年の大雪渓入口 2009 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.15(2009/08/22〜23) A |
今週の大雪渓入口 大雪渓入口まで74メートル − 昨年並み |
雪渓下端から大雪渓入口まで距離は74メートルで昨年も74メートルでした。先週の段階では昨年よりもやや遅い雪解けでしたが、今週は昨年並みとなっています。
幅は26メートル − 昨年よりやや早い雪解け |
下端部分にはは車道沿いの入口付近より一段上に上がった帯状に広がる平坦な岩場があり、その横幅は約26メートルで昨年の22メートルより広く、先週は昨年より一週間遅い雪解けでしたが、今週は逆転してやや早い雪解けを見せています。
スキーヤー専用道 − ウラジロナナカマド |
こちらは大雪渓入口付近のスキーヤー専用道沿いのウラジロナナカマド。先々週からご覧のような実ができて、先週は先端部分が窪んで来ました。今週は大きな変化は見られません。
登山道入口 | 車道との間は46メートル |
大雪渓入口から北へ50メートルほどの所に肩の小屋への登山道入口があります。雪渓の下端部分から車道までの距離は、先週の34メートルから46メートルに広がっています。昨年よりもやや遅い雪解け状態です。
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先週の登山道入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.14(2010/08/13〜15) A |
今週の登山道入口 先週と比べて雪渓と登山道との距離の乖離が見られる |
今週は少しばかり雪解けのペースが上がり、雪渓が登山道から離れて行くようになって来ました。
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先週の登山道(積雪箇所) ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.14(2010/08/13〜15) A |
今週の登山道 −
積雪は完全になくなりました これほどまで雪解けの遅いシーズンは過去にありません |
先週まではモーグルコースの岩付近がもっとも積雪が多かったエリアですが、先週まで見られた登山道上の積雪はご覧のように完全になくなり、周辺の積雪もありません。登山道上の積雪が完全になくなるまでの期間がこれほどまで遅いシーズンは過去にありません。
大雪渓から肩の小屋へ向う登山道では高山植物が見頃を迎えています。畳平のお花畑などではすでに見頃のピークが終わりつつありますが、大雪渓エリアはまだ見頃の時期が続いています。
畳平のお花畑の見頃は花の種類によっても異なるものの、大半の高山植物では7月から8月上旬です。しかし、こちらの大雪渓から肩の小屋へ向う登山道で今の時期が見頃となっているのは、ご覧のように間近まで雪渓があり、雪解けが他のエリアよりも遅い所に起因しています。
大雪渓入口にある登山道入口から肩の小屋まで約25分で、高山植物を気軽に楽しみたいという方にはお勧めのコースです。
今日は子供さんと一緒に剣ヶ峰まで...少しばかり霧がかかって視界の状態が良くありませんが、天候の変化を見ながら山頂を目指して下さい。今日のように早朝から強い日差しが差し込むと地表が熱せられて、山麓から雲が湧きあがります。その後、不安定な空気の状態となって雷雨に見舞われるのが夏山の一日のシナリオともいえます。
今回は雷雨に見舞われるところまで天候が悪化しませんでしたが、早朝から真っ青な空に包まれた夏山では、高い確率で夏山のシナリオに沿った天候の推移を見せます。(→ Next)
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