ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.10(2011/07/14〜15) @
7月8日(金)に東海地方の梅雨明けが発表され、7月9日(土)に関東甲信地方にも梅雨明けが発表され、今回はまさに「梅雨明け十日」という言葉が表現するように梅雨明け直後の安定した天候を迎えました。
7月14日(木)は、雲ひとつない快晴の朝を迎えます。早朝はひんやりとした空気が乗鞍高原にもながれていましたが、じりじりとした強い日差しに大雪渓付近では10時過ぎには、暑さを伴うようになってきます。しかし、その強い日差しがモクモクとした夏の雲を湧きあがらせ、今度は周期的に雲が流れ始めて日差しがさえぎられると、雪渓を流れるひんやりとした空気にクールダウンさせられ、まさに夏のノリクラの雰囲気が充満した大雪渓となりました。その後は、天候の変化はそれ以上は見せず、雲が抜けると再び夏空が大雪渓を覆い、バーンの緩んだモーグルコースでは夕方まで果敢に攻めるモーグラーたちが撒き散らす雪飛沫が斜光に輝く様子が続いていました。
7月15日(金)も、昨日に引き続き快晴の朝を迎えます。早朝は半袖よりも長袖のほうが良いほどのひんやりとした気候でしたが、快晴の空に灼熱の太陽が否応なく降り注ぎ、昨日以上の暑いコンディションとなりました。そのため、全身から汗が噴き出す感覚を今シーズン初めて体験しながら大雪渓までヒルクライムすることとなり、ザクザクに緩んだ大雪渓では、モーグラーやアルペンレーサーの方々が雪飛沫を上げながら果敢に攻める様子が見られました。お昼前からようやく雲が沸き始めますが、沸いては消えて、消えては沸く雲に、日差しがさえぎられることなく、終日に渡って安定した天候の一日が続きました。
それでは、梅雨明け十日の青空の続いた二日間の様子をお伝えします。
【7月14日(木)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
早朝から強い日差し | ノリクラの峰々はくっきりと |
5時前から力強い朝日が差し込みます。しっかりとした青空にノリクラの峰々もくっきりと浮かび上がっています。
雲ひとつない快晴 | 人出のやや少ない週末と同程度 |
5時の気温は14℃。この時間帯では、まだ半袖よりも長袖のほうが心地よい状態。雲ひとつない真っ青な空は、梅雨明けという言葉が脳裏にあるためか、いつも以上にビビッドに目に映ります。
今日は平日ということもあって、観光センター前駐車場にお越しになっている車は少なめ。それでも翌日の7月15日(金)は、この時間帯で40台ほどの車があり、人出の若干少ない週末と同じほどの状況でした。
観光センター |
休日は早めに営業を開始する観光センターも平日はご覧の状況。そのため、シャトルバス始発便などで大雪渓・山頂方面に向かう予定の方は、お昼の弁当などの用意はあらかじめ持参されたほうが良いでしょう。
シャトルバス乗車券発売所についても同様で、平日は6時50分からの窓口対応となります。そのため、6時10分の始発便は、乗車時にバスの車掌から購入していただくこととなります。
休日でも平日でもまったく変わらないのが、こちらのタクシーの方々。早朝5時前からタクシー乗り場で利用される方をお待ちしてます。
いつものように朝のミーティング...といっても他愛のない会話なんですが、「(6月30日に松本市内で発生した震度5強の地震で...) 加助がにらんで傾いた松本城も、地震ではびくともしなかったよなぁ〜。」と、話が続いて行きます。
松本藩で百姓一揆を起こした多田 加助が、処刑される前ににらんだ松本城の天守閣が西へ傾いたという話は、今から300年以上も前の歴史上の逸話。
ノリクラを含めた観光地で営業するタクシードライバーの方々にとって、四方山話の引き出しをいかにたくさん持っているか...うまいラーメン屋をたくさん知っている以上に重要かもしれませんね。
シャトルバス始発便を待つ方々が乗車場所へと集まってきます。今日のような良い天気の日の登山は、絶対に朝一番というのが鉄則とも考えられ、始発便を待つ登山の方々の多くも、同様に考えられているようです。(その理由は 次のページ をご覧になればわかります。)
そして、シャトルバス始発便が到着。
先ほどの乗車券発売所のところでも申し上げましたが、この時間帯は窓口業務が行われていませんので、バスの車掌が乗車時に対応します。
ベテラン車掌が手早く発券するコツなどを一つひとつ説明です。岐阜県側の乗鞍スカイラインシャトルバスには同乗しませんが、乗鞍高原から畳平に向かうシャトルバスには、必ず車掌が乗務します。おそらく、畳平までいくつもの停留所が存在することとと、乗鞍スカイラインよりも道幅が狭く、対向車確認や対向場所の無線連絡など、急峻な県道乗鞍岳線ならでは対応が必要と考えられます。
今日は11名の乗客を乗せて、観光センターを後にします。
【大雪渓までの沿道の風景】
それでは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。今日はとにかく青空が車窓いっぱいに広がっています。
朝日が昇り始めてから二時間ほど経過しますが、森林の中はまだ日差しが届かず、ひんやりとした空気が流れています。
休暇村付近から続いたカラマツの林を抜けると、目の前に乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデが広がり、三本滝ゲートへと続きます。
三本滝ゲート | かもしかゲレンデ |
三本滝ゲートの開門時間は朝6時から夕方18時まで。その時間帯は、警備員の方が常駐されています。今日の夜明け前の道路パトロールでは、きれいな朝焼けが広がっていたとのこと。
ただ、そんな朝焼けをご覧になりたいのか、開門前に自転車で通行されてようとする方もいらっしゃるとのこと。しかし、道路交通法上では、自動車も自転車も「車両」として同じ扱いになっていますので、開門時間前の通行は違法ととなります。
朝焼け・日の出をご覧になりたい方は、ご来光バスをご利用になるか、肩の小屋などの宿泊施設で前日から宿泊されることをお勧めします。
三本滝ゲートを過ぎると、日差しが高くなってきたことと、ダケカンバはカラマツほど背が高くないこともあって、明るい雰囲気となってきます。
ウラジロナナカマドの白い花が目立つようになって来ましたが、それも週を追うごとに見頃のエリアの標高が上がってきます。現在は、標高2200メートル付近の冷泉小屋から2500メートルの位ヶ原周辺です。
もちろん、沿道にはそれ以外の高山植物も見られ、先週あたりまで満開だったコバイケイソウが、今週は種子をたわわにつけている様子があり、沿道の小さな世界でも、一週間の開きは大きなものを感じます。
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今週の冷泉 |
紅葉を迎えた冷泉 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.22(2010/10/09〜10) F |
冷泉小屋の正面にはご覧のように小さな滝があり、これが冷泉と呼ばれています。善五郎の滝を始め、釜場と呼ばれる霊場がノリクラには随所にあります。こちらの冷泉も明治時代には、修験者たちの修行の場とされていました。
この冷泉も大雪渓へ続く沿道のビューポイントのひとつ。現在は緑の生い茂るシーズンは何の変哲もない光景ですが、秋になればビューポイントのひとつであることに納得できるでしょう。
そして、標高2350メートルの位ヶ原山荘を過ぎれば、森林限界を迎えて表情が一変します。
森林限界からの広大なロケーションは、位ヶ原エリアの大きな特徴。
位ヶ原山荘から1.5kmほど進んだ11号カーブ。厳冬期にはこの付近からスキー場上部まで滑走することのできるツアーコースの入口があります。夏季には鬱蒼とした森林へと表情を変えていて、冬場とはまったく異なっていて、森林保護の観点からも、立ち入ることはできません。
それでも、11号カーブ付近までやってくると、ご覧のように間近に残雪を見ることができます。
いっぱいの青空 | 雲海 − 南アルプス(奥)と経ヶ岳(手前) |
とにかく、青空ばかりが続いて行きます。そして、ご覧のような雲海からは遠景の山並みが雲海から顔を出している様子がわかります。周辺の低い山がスポイルされていて、主要な山々だけがスポットを浴びています。画像奥の山並みが南アルプスの山脈です。山並みの中央から少し左にある谷が北沢峠。北沢峠の左の山脈のピークが甲斐駒ヶ岳です。そして、北沢峠の右の山脈の一番高いピークが国内二番目の標高を示す北岳です。
南アルプスの手前に雲海に溺れそうに顔を出すのが、中央アルプスの北端に位置する経ヶ岳です。
さらに先に進むとご覧のように沿道にも積雪が見られるようになってきます。こちらは7号カーブの位ヶ原お花畑。この残雪のため、また、高山植物の様子はありません。
もう、この付近に達すると背の高いオオシラビソなどは風雪に耐えられなくなり、矮性(背が低いという意味)の植物しか自生できないため、このように開けたロケーションとなります。
美しい景勝も、そんなからくりがあるからこそ見られるもので、日本特有の厳冬期の厳しい風雪が、この風景を作り出しているのです。
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今週の宝徳霊神バス停付近 |
紅葉を迎えた宝徳霊神バス停付近 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.21(2010/10/02〜03) D |
こちらは宝徳霊神バス停付近の様子。日本各地に四季があるようにノリクラでも季節の移り変わりがはっきりとしています。必ずしも四季のひとつが一年の4分の1とは限りませんが、ちょうど三ヶ月するとご覧のような紅葉が見事に広がることと思います。
5号カーブ | 4号カーブ |
これまで高い雪の壁が見られた5号カーブや4号カーブも、残雪がさらに少なくなってきました。
穂高連邦を望むビューポイント | 大雪渓に到着 |
右を見ても左を見ても、とにかく青空と遠景の山並みばかりが映る状況の下、大雪渓に到着です。(→ Next)
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