ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.12(2011/07/28〜29) A

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(Update:2011/08/04)

 

【大雪渓に到着】

濃霧と周期的な風雨に見舞われる

大雪渓周辺の気温は10℃。ご覧のように視界が50メートルにも満たない濃霧が立ち込め、さらに周期的に風雨が強弱を繰り返す状況です。

 

大雪渓避難小屋へ逃げ込む

そのため、訪れる方々は、一様に大雪渓避難小屋へと足を運びます。スキーヤーもブーツを履いたり合羽を着たりする準備を、こちらで行わざるを得ない状況です。

 

シャトルバスが運休で、タクシーが唯一の交通手段

さて、シャトルバスが運休となっているものの、タクシーの利用は可能なため、今日は、大雪渓駐車場までお越しになるタクシーが、たくさん見られます。唯一の交通手段となったタクシーが、観光センターと大雪渓駐車場を、何度も往復する様子がありました。

前ページのタクシー乗り場でお話したニーズとは、このことだったのです。

 

準備万端

大雪渓避難小屋で合羽を着て準備万端です。今日は気温が10℃前後と、低めに推移し、合羽を着ていても暑さを感じないどころか、雨に打たれると寒ささえ覚える状況です。

 

登山ツアーの観光バス

そして、大雪渓駐車場に到着したこちらの観光バス。すでに合羽を着込んだ方が降り立ちます。

 

やはり大雪渓避難小屋へ 避難小屋はすし詰め状態

濃霧に加えて風雨が続く状況の中、向かう先はやはり大雪渓避難小屋。ここでガイドの方が今日の行程の説明を始めます。全員が合羽を着ていることをチェックするものの、風雨で体感温度の低下から低体温症の懸念もあり、合羽の中に厚手のものを着るように指示がなされます。

 

「天気がよければこちらに山頂が...」 予定を変更して周辺散策へ

山頂登山を目指したいところですが、この天候ですから、予定を変更して周辺散策となりました。本来なら、ここからスタートするはずの登山道入口に立って、「天気の良い日は、こちらに山頂が見えるはずです...」と、指差します。

 

状況に合わせて安全に行動できる範囲内で楽しむ − それでも、小さな発見がいっぱい転がっています

どんな天候が待ち受けているかわからないため、天候に合わせた計画変更はアウトドアでは必須です。また、こんな天気でも安全に行動できる範囲内で、訪れた方々に楽しんでもらうことも必要となります。しかし、標高2600メートルの大雪渓駐車場傍らでも立派な高山帯です。そのため、車道の傍らにはたくさんの高山植物が開花し、十分楽しめる状況でもあります。

単に登るだけの登山から、一歩一歩をゆっくり楽しむスタイルに変えてみると、天候が悪い状況下でも、小さな発見がいっぱい転がっていることに気づかされるものです。

 

【雪渓下部 T】

ここからは雪渓下部の様子をお伝えします。

 

昨年の大雪渓入口
2010ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.12(2010/07/31〜08/01) A
今週の大雪渓入口
昨年並みの雪解け
 
昨年の大雪渓入口
2010ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.12(2010/07/31〜08/01) A
今週の大雪渓入口
昨年並みの雪解け
 

濃霧のため、全容がつかめない状況ですが、先週からの変化としては、雪渓下端の左側部分の積雪がなくなっている様子が見られます。雪渓下端から大雪渓入口までの距離は、濃霧により計測できませんでしたが、上段の二枚の画像から、ほぼ昨年並みの雪解け状況と考えられ、昨年の計測値の61メートルとほぼ同様と考えられます。

 

幅は10メートル − 昨年並み

雪渓下端部分にある岩場は、車道沿いの入口付近より一段上に上がっていて、ご覧のように、ほぼ完全に平坦になります。その横幅は10メートル。こちらも昨年と同じです。

 

スキーヤー専用道 − ウラジロナナカマド 花期が終わりに近づく

こちらはスキーヤー専用道のウラジロナナカマド。先週、一斉に開花した状況が見られました。今週は花を落としているものが目立ちますが、まだ、花期が続いています。昨年は、ほぼすべてが花を落としていましたので、先週と同様、昨年よりも推移が若干遅いようです。

 

登山道入口 車道との幅は18メートル − 昨年よりやや早い雪解け

大雪渓入口から北へ50メートルほどの所に肩の小屋への登山道入口があります。登山道付近の雪渓と車道との幅は18メートルほどで、昨年は15メートルでしたから、少し雪解けが早いように見られます。

 

昨年の登山道入口付近
2010ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.12(2010/07/31〜08/01) A
今週の登山道入口付近
昨年並みの雪解け
 

昨年より雪解けが早いように見られる登山道入口付近を、別の角度から見ると、昨年とほとんど変わらないことがわかります。昨年は下端部分が一部張り出していたことから、車道までの距離が若干短くなりました。

先週の下端部分と今週の下端部分では高さで1メートル以上の違いが見られますが、下端付近は全体的に積雪量が数十センチとなってきましたので、この一週間の雪解け量をこの箇所では正確に測ることができなくなってきました。

 

登山道入口付近 − 高山植物

そして、こちらは先週もお伝えした登山道入口付近の高山植物の様子。

 

シナノキンバイ − 花が終わり種子ができ始める

先週は満開の状態を見せてくれたシナノキンバイ。ご覧のように花期のピークは過ぎ始めました。そして、よく見ると、子房部分が膨らみ、種子ができ始めている様子が見られます。夏場が短い高山帯では、高山植物にとっても活動できる時期が限られるため、雪解けとともに芽吹き、そして、花を開かせ結実し、その種子を雪の降る前に放出しなければ、次の世代へとつなげて行くことができません。

また、自分自身も翌年の芽吹きのために、夏が終わる前に地上部分を枯らせて、栄養分を地中の根茎に蓄えておく必要があります。環境の厳しい高山植物は、毎年毎年、種から発芽して成長することはかなり難しい状況です。そのため、種子で子孫を残すというシステムは現実的には難しく、実際には同じ株が再び発芽して、継続していることのほうが多く、その株を盗掘してしまうと、種子が残っていても同じように再び花をつけることができるか、微妙な状況であることがわかります。

そのため、越冬できない一年生の高山植物は、毎年、種子から発芽する訳ですが、そのような高山植物はかなり少なく、大半が根茎が越冬する多年生の植物です。

 

コバイケイソウも開花

そして、先週までは開花の予測すら感じられなかったコバイケイソウも、ご覧のように開花いたしました。前述のように、高山植物は、種子を育てるためのエネルギーと、自分自身が持続して行くためのエネルギーを、ひと夏の間に作り出す必要があり、コバイケイソウのような大型の高山植物では、花をつけるには大きなエネルギーが必要なのでしょう。そのため、毎年花をつけないとことにも、納得が行くところです。 Next

 

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