ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.13(2011/08/04〜05) @
8月最初のノリクラ雪渓カレンダーをお届けします。
梅雨明けからお盆までの期間は、ノリクラにおいて最も真夏を感じられる時期で、この短い時期を逃すと、ノリクラの本格的な夏は終わってしまうといっても過言ではありません。しかし、今週は、はっきりとしない天候に、真夏なんて全く感じられない状況が続いています。このままだと、本当に真夏が来ないまま、秋へと季節が先走ってしまうような勢いです。
8月4日(木)は、低く垂れ込めた曇り空から始まります。それでも時間とともに青空が広がり、今日はこのまま天候が回復して行くのかと思いました。日差しが差し込むようになった乗鞍高原とは裏腹に、大雪渓エリアは濃霧が立ち込める状況。それでも時間とともに、山頂付近まで視界が開けるようになって来ました。しかし、終日にわたって山麓から霧がわきあがり、その霧で周期的に視界が奪われる状況が続きます。日差しが差し込めば、蒸し暑さを感じさせる時もありましたが、午後からは、日差しが差し込む時間帯が長くなっても、ひんやりとした空気に入れ替わってきたこともあって、暑さを全く感じさせない状況が続きます。雲間に青空がのぞくようになりますが、夏の入道雲などどこにもなく、夏の雰囲気を全く感じさせなかった一日でした。
8月5日(金)は、昨日と比べると幾分夏らしさを取り戻しました。早朝の乗鞍高原は低く垂れ込める雲に覆われますが、それも時間とともに強い日差しとともに、虫たちの合唱が始まります。しかし、三本滝ゲートから冷泉小屋や位ヶ原山荘付近の中腹エリアは濃霧に包まれ、はっきりしない状況です。それでも、午後になると、濃霧に覆われていた中腹から上部エリアでも、しっかりとした青空が広がるようになり、それと同時にさわやかな空気に包まれるようになって、大雪渓エリアも青い空と白い雲の夏らしい雰囲気が戻ってきました。
それでは、夏が少しずつ戻ってきた、この二日間の様子をお伝えします。
【8月4日(木)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
気温は16℃、ご覧のようにノリクラの峰々は完全に雲に覆われ、山麓の低い山肌まで、すっぽりと覆うほどの低い雲が立ち込めています。
観光センター前駐車場には25台ほどの車がお越しになっていて、シャトルバスに乗車しようとされる方々が集まる様子が見られます。
こちらはシャトルバス専用の停留所。夏休みに入ったこともあって、ご家族連れの様子が多くなってきました。
今日は朝一番でやってくるために、3時半には起床してやってきたということ...ちょっと眠そうな様子ですね。ノリクラは3000メートル級の高山でありながら、比較的容易に登頂できるため、夏山シーズンともなれば、ご家族連れの方から林間学校など集団登山まで、幅広い方々がお越しになります。
ノリクラは、ほかの3000メートル級の高山と異なって、山頂近くまで自動車道が整備され、山頂までのアクセスが短いことが、幅広い方々に登山の楽しみを手軽に体験してもらえる要因ですが、気象条件などは、ほかの高山と相違はありませんので、体調管理などには十分注意してください。
そして、いつものようにシャトルバス始発便が到着し、乗車券の発売・改札が行われます。これまでにも申し上げましたが、通常、乗車券の販売は、観光センター内のシャトルバス乗車券発売所で行われますが、平日の始発便だけは、シャトルバス乗務員が販売を行います。
そして、定刻どおり、シャトルバスは観光センターを後にします。
こちらは観光センター売店の軒先。ツバメの巣があります。
そろそろ巣立ちの頃 | 今日はツバメが低く飛ぶ − それでも青空が広がり始める |
昨日、一羽が巣立って、残りの二羽も羽ばたく練習を始めていることから、巣立ちも間もなくのようです。今朝は、駐車場内をツバメが低く飛んでいて、天候が少し懸念される状態でしたが、ご覧のように、青空が上空に見られるようになって来ました。この一週間、はっきりしない天候が続いていましたが、今日は夏らしい青空にめぐり合うことができるでしょうか...
【大雪渓までの沿道の風景】
ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
シャトルバスの車窓からでは、大きくて目立つ花でないと、ご覧になることはできないかと思います。6月までの春山バスの車窓では、オオカメノキの白い花が至るところに見られましたが、8月のシャトルバスの車窓を流れる白い花はノリウツギ。
装飾花で周囲を飾られている様子から、アジサイの仲間であることが一目でわかりますね。実際の花は針状に毛羽立った雄しべが見られるところです。樹皮からから製紙用の糊が作られたことが、名前の由来とされていて、「ノリウツギ」と呼ばれるものの、ユキノシタ科ウツギ属ではなく、ユキノシタ科アジサイ属です。
やはり、シャトルバスの車窓からでは、ある程度の背丈の花でないと見ることができません。こちらは背丈が1メートルほどあるため、比較的容易に見られる花です。
その名はオオマツヨイグサ。一般的には、待宵草(まつよいぐさ)として知られています。また、月見草(つきみそう)と呼ばれることもありますが、一般的に月見草と呼ばれる品種とは、科属が同一ですが、別の植物です(アカバナ科マツヨイグサ属)。
オオマツヨイグサは、北アメリカ原産の植物からくつられた園芸種で、日本古来の植物ではありません。つまり、セイヨウタンポポやハンゴンソウと同様の外来植物です。
観光センターから7km先の三本滝ゲートに差し掛かったころには、ご覧のようにきれいな青空が広がるようになって来ました。
「こないだ、あそこに熊が出ただよ〜」と、タクシーの運転手の方が、かもしかゲレンデの方角を指差します。前回のノリクラ雪渓カレンダーの<編集後記> で、畳平近くの不消ヶ池(きえずがいけ)付近に小熊が出没し、畳平周辺は、一時入山規制の措置がとられたことをお伝えしました。
かもしかゲレンデを含む、三本滝レストハウス周辺では、これまでにも、何度か熊の出没情報があります。しかし、この付近に限らず、県道乗鞍岳線沿線では、たびたび出没していて、登山用の熊鈴を鳴らしながら、ヒルクライムされる方もいらっしゃるほどです。
かもしかゲレンデ | ヨツバヒヨドリ |
県道乗鞍岳線はかもしかゲレンデの中を進みます。日当たりのよいこの斜面では、いくつもの山野草を見つけることができます。先週、ご案内したヤナギランと同様に、明るい草地にはヨツバヒヨドリが開花している様子が見られます。
かもしかゲレンデの斜面を埋め尽くす勢いですから、シャトルバスの車窓からは容易に見つけることができるでしょう。
山麓の乗鞍高原や三本滝ゲート付近では晴れていた天候も、標高2350mの位ヶ原山荘付近からは、雲が目立つようになってきます。
山頂方面はすっぽりと雲に包まれ、大黒岳に続く尾根に沿って、雲が湧き上がって行きます。
位ヶ原山荘から約1.5km先の11号カーブ。冬のツアーコースの入口に相当する箇所で、いつもなら高天ヶ原と剣ヶ峰のピークがきれいに並んで見られる場所ですが、今日は完全に雲に飲み込まれています。
ツアーコース入口付近は標高2500mほど。眼下には雲海が広がり、南アルプスなどの高い山並みだけが、何とか雲から頭を出している様子が見られます。
位ヶ原お花畑 − 積雪がなくなる | 5号カーブ |
さらに先を進んだ7号カーブ付近の位ヶ原お花畑は、先週までの残雪が完全になくなりました。雪解けの終わった地肌には、すでに緑の芽吹きが見られ、高山植物たちは、短い夏に一斉に喚起をあげているようにも感じられます。
しかし、5号カーブはご覧のように、まだ残雪があります。
そして、山頂をすっぽりと包む濃霧が目の前まで迫る中、大雪渓に到着です。(→ Next)
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