ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.15(2011/08/18〜19) @
お盆が過ぎる、ノリクラの夏もそろそろ終りになってきます。もちろん、各地の猛暑とは完全に無縁な状況で、暑さどころか、汗も出ず、さらに寒くて半袖ではいられない時間帯が長くなってきます。
8月18日(木)は、曇り空の朝から始まります。まだ、お盆休みが続いている方もいらっしゃり、観光センター前駐車場は、普段の平日よりもやや多い状況。次第に青空が広がってきますが、大雪渓エリアは終始濃霧に覆われます。早朝は周期的に雨に見舞われますが、その後は、合羽の要らない状況になります。相変わらずの濃霧ですが、時折、霧が抜けた先の乗鞍高原にはしっかりと日差しが差し込む様子もあって、天候が悪いのは、大雪渓などの上部エリアだけのようです。気温は終始12℃前後で、日中としてはやや低めの状況ですが、バーンはエッジの効く状況で、大きなスプーンカットが広がる中で、フラットなゲレンデでは掴み取れない感覚をトレーニングするレーシングキャンプの様子もありました。
8月19日(金)は、昨晩から降り続く雨が明け方からまとまった降り方となっています。山麓の乗鞍高原では、時間とともに雲がさらに低く垂れ込めますが、上部の大雪渓エリアでは、山麓とは逆に雲の上にあって、午前中の霧と小雨も次第に収まって来ます。ただ、山麓の天候からは、上部エリアの天候回復など、まったく想像できない状態で、大雪渓エリアに訪れる人は皆無。静かな大雪渓を独り占めする感覚は贅沢とも言えるでしょう。そして、午後からは青空が広がり、日差しが差し込むと、大雪渓周辺ではエゾゼミが一斉に鳴きはじめます。
それでは、この二日間の様子をお伝えします。
【8月18日(木)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
ご覧のように曇り空が広がります。気温は18℃で。長袖であれば寒さはありません。
観光センター前駐車場には30台ほどの車がお越しになっています。お盆は終わりましたが、まだお休みが続いていらっしゃる方もあって、いつもの平日よりも、やや多い様子が見られます。
始発のシャトルバスは6時10分に発車。時間が近づくにつれて、シャトルバス乗車券発売所や停留所には、人影が徐々に集まってくるようになります。
そして、定刻5分前にシャトルバスが到着。
車掌の方が改札を行います。お盆以降、不順な天候が続いています。
回収した切符を数えながら、「日本の天気予報が当たる確率は80%ほどといわれていますが、標高2702メートルの畳平の天候をズバッと当てることは、まず無理なんでしょう...」
山麓が晴れていても、上部エリアは雨や濃霧。そして、山麓はどんよりとした雲に覆われていても、大雪渓などではきれいな雲海を眼下に望むことができることもあります。もちろん、山麓も山頂も同じ天候の日もあります。
シャトルバスに乗車される方々も、乗車時点の乗鞍高原の天候を、判断材料のひとつとしますので、どんなに上部エリアの天候が良くても、山麓の乗鞍高原の天候が悪ければ、乗車をあきらめてしまうこともあります。
始発のシャトルバスは、観光センターを後にします。この先、大雪渓・畳平などの上部エリアを目指しますが、車窓はどのような天候変化を見せてくれるでしょうか?
観光センターの軒先では、自転車ツーリングの準備をされる様子が見られます。ヒルクライムとは異なり、自転車には数々の荷物が満載です。
今日で5日目の自転車の旅 | 炎天下の中を走り続け、腕や脚は真っ赤... |
こちらはサイクリング部の大学生の皆さん。埼玉を出発して今日で5日目。今日の予定は、乗鞍高原から県道乗鞍岳線を畳平まで登り、畳平から乗鞍スカイラインを下りて、白川郷まで向かう予定とのこと。炎天下の中を走り続けた腕や脚は真っ赤に日焼けし、薬をつけてメンテナンス。
乗鞍高原から望む山頂方面は雲がかかり、県道乗鞍岳線の終点の畳平は濃霧が続いています。上部エリアの濃霧は、ひどいときには視界が10メートルほどまで低下し、そんなときは、強風もあわせて吹き抜けていることも多々あります。そのため、乗鞍スカイラインでは、濃霧がひどいときは、バス・タクシーなどの自動車の通行はできても、自転車だけ通行止めとすることがあります。
今日もご多聞に漏れず、乗鞍スカイラインは自転車は通行止め。乗鞍高原から畳平まで苦労して上っても、乗鞍スカイラインを通行できなければ、今日の計画は台無しになってしまいます。
自転車で乗鞍スカイラインを通行される方は、事前に道路状況を確認してから出発してください。
【大雪渓までの沿道の風景】
それでは、ここからはいつものように、大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。
シャトルバスの車窓から目立つ大型の植物は、その花期は終わりに近づき、開花しているものが少なくなってきました。しかし、所々に背の高い黄色の花が点在している様子があります。
こちらはマルバタケブキ(キク科メタカラコウ属)。蕗(ふき)に似た丸く大きな葉を持ち、蕗よりも高所に自生するところから「岳蕗(タケブキ)」というネーミングを持っています。県道乗鞍岳線では、それほどたくさんの分布を見ませんが、高さが1メートル以上にもなるため、シャトルバスの車窓でも、そして、ヒルクライムのすぐ脇に自生していることを見つけることができるはずです。
こちらは、観光センターから7km先にある三本滝ゲート。この先からマイカー規制が始まり、バス・タクシー、自転車のみ通行できます。三本滝ゲートには、警備員の方が常駐しており、開門前の道路パトロールや許可車両の誘導を行っています。
すこし青空がのぞくようになって来ましたが、警備員の方の早朝パトロールでは、ひどく降られてしまったとのこと。今日はこのまま天候が回復して行くのでしょうか?
かもしかゲレンデ | ヤナギランの見頃が続く |
三本滝ゲートから先に進み、こちらは乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデ。まだまだ、ヤナギランの見頃の時期が続いています。
ゲレンデに咲く黄色の花は、アラゲハンゴンソウ(粗毛反魂草、キク科オオハンゴンソウ属)。特定外来種として指定され、積極的に駆除が実施されているオオハンゴンソウと同じ仲間の植物です。
「粗毛」という名称のとおり、全体的に粗い毛で覆われています。花の中心にある頭花が暗紫色で、頭花が緑色のオオハンゴンソウとは区別がつきます。オオハンゴンソウと同様、北アメリカ原産の帰化植物で、オオハンゴンソウの仲間は、繁殖力が強いため、今後、アラゲハンゴンソウも、駆除が必要となってくるかもしれません。
緑の回廊もその色合いが徐々に変化 | 部分的な紅葉も目立ってきた |
摩利支天を過ぎて、沿道はウラジロナナカマドやダケカンバの回廊が続くようになります。そのため、秋には見事な紅葉のスポットとなります。また、初夏の萌黄色の新緑も美しいエリアでもあります。
このように微妙に葉の色彩を変化しながら一年が楽しめるわけ、真夏のこの時期にはしっかりとした緑の葉も、少しずつ黄色味をおびはじめてきているように感じます。そして、部分的な紅葉が見られる箇所も多くなってきました。
そして、ウラジロナナカマドの赤い実も目立ってきました。
前回の ノリクラ 雪渓カレンダーVol.14(2011/08/11〜13) @ では、尾っぽのようなクガイソウをご紹介しましたが、同じような形状の山野草が、あちこちで見られるようになって来ました。
こちらはサラシナショウマ(晒菜升麻、キンポウゲ科サラシナショウマ属)。ヤマブキショウマやレンゲショウマなど、「ショウマ(升麻)」という名称を持つ植物が数々ありますが、サラシナショウマが本家本元で、ショウマ(升麻)という名称は、サラシナショウマの根茎を原料とする生薬名から由来されています。晒菜というように、若葉はゆでて水でさらして食用とすることができます。
これらのショウマの仲間は、サラシナショウマと同類の植物かと思われますが、その関連性はなく、ヤマブキショウマ(バラ科レンゲショウマ属)は、葉がヤマブキに似ていることから、レンゲショウマ(キンポウゲ科レンゲショウマ属)は、花が蓮の花に似ているところから由来しています。
そして、森林限界の位ヶ原山荘を過ぎると...
雲が低く垂れ込めるようになって来ました。
そしてさらに上部の位ヶ原に到達すると、上空には青空が広がり、視界が開けるようになって来ました。山麓の乗鞍高原では、しっかりとした日差しが差し込むようになり、天候は次第に回復して行く様子が見られます。
位ヶ原山荘から約1.5km先の11号カーブ。冬のツアーコースの入口に相当する箇所で、いつもなら高天ヶ原と剣ヶ峰のピークがきれいに並んで見られる場所ですが、山頂付近は雲に飲み込まれています。
こちらは7号カーブ付近の位ヶ原お花畑。
二週間前に完全に雪解けが終わり、多くの高山植物が開花している様子があります。黄色の花が点在する右の画像は、ミヤマキンバイ。雪解けからわずか二週間で開花まで成長する様子には、高山植物の生命力の強さを感じさせられます。
6号カーブ − 濃霧が迫る | 5号カーブ − 完全に雪解け |
さらに進んで、宝徳霊神バス停のある5号カーブ付近に達すると、ご覧のように濃霧の中へ突入し始めた様子がわかります。また、先週わずかに残っていた5号カーブの残雪も、ご覧のように完全に雪解けが終わりました。
そして、完全に濃霧に包まれた大雪渓に到着です。(→ Next)
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