ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.16(2011/08/25〜27) B

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(Update:2011/09/01)

 

【雪渓下部 U】

石碑の岩

こちらは雪渓下部の南端に当たる石碑の岩。周辺は完全に雪解けが完了しています。

 

チングルマ 先週とほとんど変わらず

こちらは毎年定点でお伝えしている石碑の岩にあるチングルマ。先週・先々週とほぼ同じ状態を保っています。「昨年(2010年)は、完全にさく果が飛んでなくなっていましたが、一昨年(2009年)は、今年と同じようにきれいなさく果の綿毛を見せてくれました。」と、先週お伝えしましたが、遅い推移を見せた2009年や2007年も、今年と同じように、まだ、さく果が残っていました。

 

雪渓上部下端部分

石碑の岩の東側にあるスキーヤー専用道を進むと、雪渓上部の下端に達します。

 

雪渓上部下端部分
下端部分は先週より3メートル上昇

雪渓上部の下端部分は、先週から3メートル上昇して、撮影地点から30メートル先にあります。

 

雪渓上部下端部分 − 昨年よりも一週間遅い雪解け

先週の段階では、昨年よりやや遅い雪解け状況でしたが、今週はさら雪解けが遅くなり、昨年より一週間遅い雪解けを示しています。

 

昨年同時期より一週間早い雪渓上部下端部分
2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.15(2010/08/21〜22) B
今週の雪渓上部下端部分
昨年より一週間遅い雪解け

下端部分の位置の比較では、なかなかわかりにくい状況ですが、下端付近にあるこちらの大岩を比較すると、より簡単には比較できます。昨年同時期より一週間遅い画像の大岩が、今週とほぼ同じ大きさになっています。このことから、昨年より一週間遅い雪解け状況であることがわかります。

岩に貼り付いているのは畳の残骸。この畳は20年以上経過すると考えられます。通常、平地で20年も経過すれば、跡形もなくなっていると思いますが、冷涼な大雪渓では分解が進まず、ご覧のように残ったままです。

このことから、残飯などを破棄しても、分解されずに残ってしまい、果実の蔕(へた)とか種といったものでも、必ず持ち帰らなければならないことがわかります。

 

昨年同時期より一週間早い雪渓上部下端部分
2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.15(2010/08/21〜22) B
今週の雪渓上部下端部分
昨年より一週間以上遅い雪解け

さらに下端部分をもう少し観察すると、昨年よりも一週間以上遅い状況であることがわかります。さらに雪解けスピードが遅くなっています。

 

【雪渓中段】

雪渓中段

雪渓下部の北端のモーグルコースの岩と南端の石碑の岩の間を上がったエリアで、雪渓上部の雪渓下部を結ぶ緩斜面です。この位置からの画像では、積雪は完全になくなっているように見えますが、中央の大岩の反対側にまだ積雪が残っています。

 

先週の雪渓中段
ノリクラ 雪渓カレンダーVol.15(2011/08/18〜19) B
i今週の雪渓中段
 

先週の画像と比べるとかなり小さくなっていることがわかります。この箇所はちょうど窪地なっていて、最後にここだけ積雪が残ります。

 

大きさは、長さ15メートル×横幅5メートル。

 

雪渓中段全景 − 昨年よりやや早い雪解け

先週と同様、昨年よりやや早い雪解け状況を示しています。おそらく、次週には完全になくなっていることと考えられます。

イワギキョウ

大雪渓エリアは、数々の高山植物が咲いています。その中でも、見頃を迎えているのはイワギキョウ。雪解けの遅い大雪渓では、他のエリアよりも開花の時期が若干遅い状況が見られ、イワギキョウでも同じような推移となっています。

また、同じ場所に咲くイワギキョウでも、よく見ると、まだ、つぼみのものもあって、その成長に差があることがわかります。

 

左と右の二つのイワギキョウ

こちらの左と右の二つのイワギキョウの差がお分かりでしょうか?

 

左 − 花柱の先端が開かず、まだ受粉しない 右 −花柱の先端が裂けて受粉できる

花期の推移としては、左の状態から右の状態へと進んで行きます。二つの違いは中心の花柱の様子。左の画像は花柱が一本ですが、右の画像は花柱の先端が3裂に分かれています。このように3裂に分かれると、花柱は花粉を受粉できる状態となります。

また、花柱の奥にひげのようにあるのが雄しべで、花柱よりもこちらのほうが先に熟成し、花粉を放出し始めます。これが左の画像の状態で、このときは花柱が熟成されていません。そして、花粉の放出が終わる頃、花柱が熟成し、右の画像のように3裂して、ほかのイワギキョウからの花粉がやってくるのを待つわけです。

つまり、自分の花粉がなくなってから花柱は熟すことから、自家受粉を防止するためと考えられています。イワギキョウに限らず、キキョウの仲間は、同じような動態を観察することができます。 Next

 

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