ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.2(2012/05/19〜20) F

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(Update:2012/05/24)

 

【頂上小屋】

こちらは剣ヶ峰山頂直下にある頂上小屋。

 

小屋は雪に閉ざされたまま

頂上小屋はご覧のようにまだ雪に閉ざされたままです。

 

昨年同時期の頂上小屋
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C
一昨年同時期の頂上小屋
2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2010/05/22〜23) C

左の画像は昨年同時期のもので、右の画像は一昨年同時期の様子。昨年はかなり積雪が少ないことがわかります。また、一昨年よりも今週の方が積雪量が多い様子が見られます。

 

老朽化が進み、雪や人の重みのダメージが大きい
=柱の中には立ち入らないようお願いいたします=

頂上小屋の周囲にはご覧のように柱が立てられています。頂上小屋は老朽化が進んで、毎年、補強を繰り返しながら運営されています。そのため、屋根部分には目印として柱の立てられていて、その内側には立ち入らないようお願いいたします。

積雪の重みに加えて人の加重によるダメージが大きく、特に、スキーのような大きな加重をかける事や、大勢の人が同時に屋根部分に立ち入ることは危険です。また、登山者のアイゼンの歯で屋根に穴をあけてしまうことは、他の山小屋でも問題となっていています。ぜひとも、ご理解とご承知のほどお願いいたします。

 

【剣ヶ峰〜蚕玉岳】

こちらは剣ヶ峰〜蚕玉岳(こだまだけ)稜線。

 

昨年の蚕玉岳山頂付近
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C

今週の蚕玉岳山頂付近
昨年・一昨年より多く、2009年より少ない

蚕玉岳山頂は、先週より70センチ程度の雪解けが見られます。積雪量は昨年・一昨年(2010年)よりも多く、2009年より少ない状況です。

 

滑走性の悪い湿雪の新雪

取材に訪れたときは濃霧がひどく、バーン状況がはっきりわかりませんが、先日の新雪と春雪がまだらに分布する状態です。新雪といってもこの時期に降る雪ですから山頂付近でも湿雪で、滑走性の悪い雪質です。

 

昨年の位ヶ原
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C
今週の位ヶ原
2008年以降でもっとも多い積雪量
昨年の剣ヶ峰直下の岩
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C
今週の剣ヶ峰直下の岩
2010年に次ぐ積雪量

上段は稜線から滑り降りたところから見る位ヶ原。先週はほとんどハイマツが見られませんでしたが、今週は少しずつ多くなって来ました。それでも、2008年以降でもっとも積雪量の多い状態が見られます。

下段の剣ヶ峰直下の岩付近は、濃霧のため撮影位置がいつもと異なっていて正確に比較することができませんが、ここ最近では最も積雪量の多かった2010年には及ばないものの、それに次ぐ状態であると推察されます。

 

ようやく視界が開ける

山頂付近にかかっていた濃霧も、稜線から250メートルほど下ると、ようやく視界が開けるようになって来ました。

 

3分の1地点 分断箇所(斜面から緩斜面へ)

稜線から県道乗鞍岳線との合流地点までの区間を3分の1程度滑走したところ。急斜面から緩斜面に変化する部分です。雪解けが進んで6月中下旬ごろになるとこの付近は左右から岩場やハイマツ帯が延びて来て滑走エリアが上部と下部に分断されて滑走できなくなります。

左に見える岩場が先週よりも目立ってきたものの、どの部分から上下が分断されるのか、現段階では全くわからないほど積雪の多い状態です。

 

緩斜面付近の左右のハイマツ帯がようやく現れる

稜線から沢筋へと滑り込んで行くこのルートは、終盤の緩斜面付近は左右をハイマツ帯に囲まれるようになってきます。先週はほとんど見られなかった左右のハイマツ帯がようやく現れるようになって来ました。

 

ハイマツ帯はまだ雪面と同じ高さ − 今後は人の背丈以上に

滑走可能時期の終わりに差し掛かる6月中旬〜下旬になると、左右のハイマツ帯は人の背丈以上高さになります。しかし、現在は雪面とほぼ同じ高さしかありません。

 

県道乗鞍岳線

稜線から約1kmほど滑り降りると県道乗鞍岳線と合流します。今年は除雪作業の進捗がかなり早く、取材した5月19日(土)・20日(日)の時点で、除雪の先端は大雪渓駐車場を過ぎて3号カーブ付近まで到達しています。また、アスファルト路面が見えるまで掘り下げられているのはこの付近までで、バスの通行ができるように雪をさらに掘り下げる作業が大雪渓駐車場方面へと続けられると思います。

ここから大雪渓駐車場までは300メートルほど。現在、位ヶ原山荘が終点となっている乗鞍岳春山バスは、6月より大雪渓・肩の小屋口まで延長運行される予定です。

 

切り通しは4.5メートル 路面にはまだ積雪が残る

アスファルト路面まで除雪がされたものの、まだ、一部除雪が完了していない状態もあり、また、先日の降雪で埋まってしまった様子もあります。稜線から滑り降りてきたこの箇所もアスファルト路面から1.5メートルほどの高さまで積雪が残っていて、雪の壁の上端は雪面さらにスキー1台分以上の積雪があります。アスファルト路面から雪の壁の上端までの高さは実質4.5メートルほどあります。

例年、この時期はまだ除雪が進んでいないため、路面からの積雪量を比較することはできませんが、付近のハイマツの高さなどから例年よりも多い状況と推測されます。

 

【昨年の今ごろは?】

2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) @

5月21日(土)は、朝方に少し雲が広がり、畳平など上部エリアは濃霧が激しく流れて行く様子が見られましたが、天候は次第に回復して、ほぼ終日にわたって快晴の一日となりました。その青空はしっかりとした真っ青な状態ではなく、少し霞んだ様子で、それと呼応するように日差しも肌に突き刺さるような強さはなく、柔らかな雰囲気の天候が続きました。また、雪面のほうも柔らかなコンディションで、ツボ足だと踏み抜いてしまうところもあり、何もかもが柔らかさに包まれた状況でした。

そして、5月22日(日)は早朝から雨が降り始めました。それほど激しい降り方ではありませんが、春山バスに乗車される方々は数えるほど。ツアーコースも滑走がかなり難しい状況に近くなるほど雪解けが進み、上部エリアと山麓を結ぶルートが途絶えてくると、季節がまた一歩進んでいくことを受け入れなければならないと感じるものです。

 

<編集後記>

「地図を持たずに山に入るなんて...」

夕方15時。春山バス下り最終便の出発したあとの位ヶ原山荘付近にスキーヤーがいます。山荘に宿泊される方かと思ったものの話をお聞きすると、一緒に下山する仲間を待っているところだとのこと。春山バスが出発した後でしたから、どのように下山するのかお聞きすると、「ツアーコースで下山滑走」という回答が返ってきました。

日も暮れかけていて時間的な焦りも感じられない様子でしたから、もう少し詳細にお話をお聞きすると、「だって、ツアーコースは山荘のすぐ下でしょ〜。春山バスでもらったパンフレットの地図ではそうなってますから大丈夫!」と返ってきます。
「では、パンフレットを見せてください」と、手にしている春山バスのパンフレットの地図を一緒に確認し、「あなたの居る位ヶ原山荘はここで、ツアーコースの入口はここですよ。車道を1.5kmも登って行く必要があり、1時間弱はかかりますよ!」と説明すると、初めて自分のおかれている状況が、まずい方向へ進んでいることに気づきます。

頭をかきながら「いや〜ありがとうございます。失敗するところでしたよ!」と、おっしゃっていましたが、「もう、すでに失敗しているんですよ!」と、あえて強く申し上げました。

地図を持たずに入山することと、地図を持っていてもしっかり見ていないことは、どちらも大きな問題です。これまで装備のことを常々もうしあげてきましたが、行動においても注意を払って入山すべきと思います。

小さな失敗は必ずしも事故にはつながりません。しかし、事故の原因にはどこかに失敗(問題点)があります。小さな失敗を見逃すことは、大きな失敗を誘発することにつながります。


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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