ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.20(2012/09/22〜23) F

Top-page > Index > Page:   1  2  3  4  5  6  7

(Update:2012/09/27)

 

【紅葉情報−冷泉小屋〜魔利支天付近(標高2220〜2000m付近)】

★色付きが始まりました(例年の見頃:9月下旬〜10月上旬)★

冷泉 − と若干色付きが始まる

中腹の冷泉小屋から摩利支天付近はダケカンバ、ウラジロナナカマド以外の広葉樹が増えてきて、彩りにバリエーションが見られるようになってきます。

こちらは冷泉周辺、先週と比べると若干色付きが始まっているように見られます。

 

冷泉 − 修験者の修行の場

かつては修験者の修行の場でもあった冷泉は、温度こそ湧き水とのものですが、周辺には硫黄の匂いが漂っています。また、シャトルバスの車内では「体にかけると病気が治ると昔からいわれ、霊験あらたかな冷泉として知られます。」と、アナウンスされるほどです。

 

冷泉小屋周辺

大雪渓・位ヶ原などの上部エリアと同様、ダケカンバに黄色の部分が増えてきています。色付き始めたといってもよい状態ですが、上部エリアと比べると、色付き始めた部分が少ない様子が見られます。

 

針葉樹と落葉樹が混在 緑一色の夏場から変化が始まる

この付近は、標高の高いところに多く見られるオオシラビソなどの針葉樹と、それよりもやや低いところに見られるダケカンバなどの広葉樹の両者が混在しています。

そのため、常緑の針葉樹の中に、紅葉する木々が点在するようになり、緑一色だった夏場にはその違いがはっきりしなかったものの、現在はご覧のようにその違いが一目瞭然の状態へと移り変わってきました。

 

冷泉小屋〜魔利支天中間地点(28号カーブ)

冷泉小屋と魔利支天バス停の中間付近にあり荒田橋(あれたばし)を少し下ったあたりの28号カーブ付近。

 

ウラジロナナカマド − 枯れるケースがある タカネナナカマド − 枯れずにきれいなものが多い

高山帯のナナカマドにも何種類か存在していて、ノリクラでは左のウラジロナナカマドが大半を占めています。そして、数は若干少ないものの、右のタカネナナカマドも分布しています。

両者の細かな違いはまた別の機会にお話いたしますが、観察している限りでは、ウラジロナナカマドのほうが乾燥しやすいようで、左の画像も葉が枯れ始めている様子があります。しかし、右のタカネナナカマドは葉の状態が良いものが多く、概して枯れてしまうものが少ないようです。

 

中腹エリアは色合いのバリエーションが豊富

また、紅葉したときの色合いも異なり、ウラジロナナカマドは黄色からオレンジ(橙色)、そして紅色とバリエーションが豊富ですが、タカネナナカマドはどの個体も深い真紅に色付き、ウラジロナナカマドの紅葉のような不安定さはなく、時期が訪れれば必ず綺麗に紅葉する傾向が見られます。

右の画像のミネカエデなど多数の紅葉が存在し、中腹エリアは色合いのバリエーションが豊富です。

 

昨年の冷泉小屋〜魔利支天中間地点(28号カーブ)
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.20(2011/09/22〜23) E
2009年の冷泉小屋〜魔利支天中間地点(28号カーブ)
2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.20(2009/09/26〜27) G

上段は昨年同時期のもの、下段は綺麗な紅葉を見せた2009年の同時期のもの。昨年の画像を見ると見頃を迎える前の段階ですが、あまり色合いがよくありません。それと比較して、今週の状態は色付いている部分は綺麗な発色をしていますので、昨年よりもよい紅葉が見られるかもしれません。また、2009年はピークの色合いを見せています。

 

これからは紅葉の回廊が続くようになる

摩利支天から冷泉小屋までの区間は木々に囲まれていて、これからの季節は紅葉の回廊が続きます。シャトルバスの車窓に流れる紅葉は手に取るほど間近に眺めることができ、ヒルクライムやランニングも目に優しく写る光景にその辛さが癒されるものでしょう。

 

【昨年の今ごろは?】

2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.20(2011/09/22〜23) @

9月22日(木)は、台風15号が日本列島を通過し、台風一過にふさわしい青空の朝を迎えます。気温は10℃と低めで、8時30分ごろから雨が降り始めると同時に、空気が冷たいものに置き換わってきます。台風の影響で通行止めとなっていた県道乗鞍岳線は10時40分に開門します。しかし、降り始めた霧雨は晴れているのに続いていて、不安定な状況の中、虹のアーチが大きく架かるほど。そして、上部の位ヶ原からはさらに冷たさが強くなり、大雪渓エリアでは2℃まで低下し、冷たい霧雨が降り続く中では、久々に手が悴み、顔の感覚がなくなる思いをさせられました。

9月23日(金)は、気温0℃と今期一番の冷え込みを見せた快晴の朝を迎えます。そして、この冷え込みのため昨日の雨が凍結し、岐阜県側の乗鞍スカイラインは通行止め。そのため、岐阜県側・長野県側双方のシャトルバスは、始発から運休となりましたが、その後、シャトルバスも肩の小屋口バス停での折り返し運行という条件付で8時便から運行が開始され、さらに乗鞍スカイラインも9時から通行止めが解除されたことから、シャトルバスは通常運行となりました。午前中は山麓からの雲に包まれるときもありましたが、午後はほぼ解消し、まずまずの天候の一日でしたが、昨日同様、終日冷え込んだ空気に包まれ、正午の大雪渓の気温は6℃までしか上昇せず、午後の畳平・乗鞍スカイラインでは0℃まで低下する状況でした。

ただ、9月22日から23日かけての冷え込みで畳平では初氷が観察され、大雪渓・位ヶ原などの上部エリアでは霜枯れにより、紅葉は壊滅的な状態となりました。

 

<編集後記>

「綺麗な紅葉になる気象条件は?...」

最低気温が8℃以下になると紅葉が始まるといわれていますが、よい紅葉になるかどうかという指標はあるのでしょうか?

綺麗な紅葉になる気象条件として...

@ 夏場の気温が高くて降水量が多いこと。
A 紅葉を迎える時期になって、晴天が続き、朝夕の寒暖の差が大きくなること。

が、挙げれるようです。

さて、紅葉情報で毎回比較に挙げている見事な紅葉を見せてくれた2009年と、壊滅的ともいえた2011年では、気象的な違いはあるのでしょうか?

見事な紅葉だった2009年
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.19(2009/09/19〜20) F
壊滅的ともいえた2011年
ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.19(2011/09/15〜16) E

 

● 一番目の条件の「@ 夏場の気温が高くて降水量が多いこと。」について見てみましょう。こちらは8月のアメダス観測地点 奈川のデーターです。(乗鞍には観測地点がありませんので、近隣の松本市 奈川のデーターを参照します)

8月(8/1〜8/31) 紅葉 平均気温 降水量(累計)
平年   20.46℃ 145.9mm
2009年  19.86℃(平年より低い) 121mm(平年より少ない)
2011年 × 20.41℃ 239mm(平年より多い)
2012年(今年) 20.92℃ 138.5mm

意外なことに、2009年の平均気温・降水量ともに平年よりも少ないことがわかります。そして、2011年の降水量は平年の1.6倍にも達し、「夏場の気温が高くて降水量が多いこと」という条件は、この二つのシーズン(2009年・2011年)に関しては成り立ちません。

さて、今年は「猛暑猛暑」と言われた割には、平均気温は平年並みでした。しかし、最高気温は平年より1℃近く高く、やはり暑かったといえるでしょう。また、降水量は平年以下です。

 

● 二番面の条件の「A 紅葉を迎える時期になって、晴天が続き、朝夕の寒暖の差が大きくなること。」はどうでしょうか?

9月(9/1〜9/24) 紅葉 日照時間
(累計)
寒暖差
(平均)
最低気温
(平均)
最高気温
(平均)
平均気温
(平均)
台風上陸数
平年   107.1h 11.0℃ 12.3℃ 23.3℃ 17.0℃ -
2009年 133.2h 11.4℃ 10.6℃   22.0℃ 15.5℃ 0
2011年 × 127.8h 11.6℃ 12.5℃ 24.2℃ 17.5℃ 2
2012年(今年)  124.7h 11.5℃ 13.9℃ 25.4℃ 18.5℃ 0

確かに2009年は平年以上の日照があり、わずかではあるものの、寒暖差も平年以上です。しかし、2011年も同様に平年以上の日照量と寒暖差があります。大きく異なるのは、2009年は平均気温(最高気温・最低気温)が平年よりも低く、2011年は平年よりも高いことです。それに加えて、2009年は台風の上陸がなく、2011年は台風が9月に2回も上陸しています。

どうやら、この二つのシーズンに関して見ると、寒暖の差というよりも気温そのもののが低いことと、台風に影響があったようです。

今年は平年以上の日照量があり、台風の上陸もありません。しかし、気温が平年よりもかなり高い状態です。このことから、気温さえ低くなってくれれば、綺麗な紅葉を迎えてくれるはずと捉えることもできます。


さて、今年の紅葉はどのように進捗するかが気がかりですが、上記のデーターだけを見れば、気温さえ低くなってくれれば、綺麗な紅葉になるとも考えられます。
しかし、まだまだ不足しているデーターもあるかと思いますので、どのデーターと相関がありそうか、ご自身で色々推測・探求してみるのも楽しいかもしれません。

 

Copyright (C)   乗鞍大雪渓WebSite

Top ||   <<Back  1  2  3  4  5  6  7   -  Next-Page(Vol.21) >>