ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.7(2013/06/21〜22) @

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(Update:2013/06/27)

 

今回は6月23日(日)に第8回乗鞍天空マラソンが開催された都合から、取材を一日前倒しして、6月21日(金)〜22日(土)に実施しました。台風4号の接近に伴う梅雨前線の活発化で、週の半ばには大雨となりましたが、週の終りには前線が南下してそれほどの降り方でもなく、何とか耐えることのできた二日間でした。

取材一日目の6月21日(金)は、雲間に朝日がのぞく状態から始まったものの、10時30分頃から冷たい雨が降り始めます。周期的に霧が立ち込める状況ですが、見通しがはっきりしている時間帯のほうが長い状態でした。ただ、冷たい空気に終日包まれて、指先が悴むほどの状況で、とても6月下旬とは思えない気候です。降る雨が雪や霙にならなかったことだけが幸いかと思います。

取材二日目の6月22日(土)は、朝一番は曇り空でしたが7時過ぎから小雨。春山バス始発便が到着した8時過ぎの大雪渓付近は、小雨に加えて濃霧で周囲が全く確認できないほどの天候となりました。10時頃から雨の降り方はやや強くなり、この時期は天気予報が当たりにくい時期でもあり、晴マークが並んだ天気予報とは裏腹の状況。12時前後に雨の降り方が激しくなって山頂付近の霧が抜けて行きますが、その後もぐずついた天候が続きました。
午後から第8回乗鞍天空マラソンの大会会場の観光センターへ向かいました。乗鞍高原でも雨降りが続いていましたが、14時30分頃からきれいな青空が広がって、明日の大会を保障してくれるかのような状況となりました。

そして、6月23日(日)は、大会開始1時間前からきれいな青空となり、穂高の山並みがくっきり浮かぶ中で、第8回乗鞍天空マラソンが開催されました。昨年よりも200名ほど多い2183名のエントリー数となりました。第8回乗鞍天空マラソンの特集は、7月上旬に掲載を予定しておりますので、今しばらくお待ちください。

大雪渓・稜線付近の積雪量は、全体的に昨年・例年より少なく、1〜2週間程度雪解けが早い状態です。稜線付近の雪解けにより、剣ヶ峰〜蚕玉岳稜線からの滑走は不能となり、朝日岳から大雪渓への滑走バーンも一部岩が出始めました。そのため、今シーズンの稜線からの滑走は今週で終了となります。また、肩の小屋から剣ヶ峰山頂への登山道は、朝日岳付近で一部積雪が残っていて、アイゼンが必要です。


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

◎ 今回の目次

Page-1 : 【6月21日(金)、ほおのき平駐車場】       【乗鞍スカイライン】
Page-2 : 【畳平周辺】       【肩の小屋へ】       【肩の小屋】
Page-3 : 【稜線へ】       【稜線】       【剣ヶ峰〜蚕玉岳稜線】
Page-4 : 【6月22日(土)、観光センター前駐車場】       【乗鞍岳春山バス、大雪渓へ】
Page-5 : 【大雪渓に到着】
Page-6 : 【大雪渓下部 T】       【大雪渓下部 U、モーグルコース】       【昨年の今ごろは?】       <編集後記>「6月だからこそ...」

【剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳方面への登山道の積雪状況(6月21日)】(Page-3)
【剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳稜線付近の滑走バーン状況(6月21日)】(Page-3)

●参考資料●
(ツアーコース概要) − ノリクラガイドマップ(冬〜春スキー版)
(位ヶ原・大雪渓・山頂方面 概要) − ノリクラガイドマップ(春〜夏スキー 山頂版)
(乗鞍岳春山アクセス方法) − お知らせ − Mt.乗鞍営業終了以降の乗鞍岳春山アクセス方法(4〜6月、ツアーコース、春山バス、乗鞍スカイライン)   

 

【6月21日(金)、ほおのき平駐車場】

ほおのき平駐車場
=岐阜県側 乗鞍スカイライン乗り換え駐車場=

今回は取材一日目は岐阜県側のほおのき平からスタートし、二日目は長野県側の観光センターからの様子をお伝えします。早朝6時のほおのき平駐車場、ご覧のとおりの曇り空の朝を迎えます。

 

気温14℃、雲間から朝日が 猫岳もはっきり見られ、視界は悪くない

気温は14℃。雲間から朝日がこぼれていて、乗鞍スカイラインが山腹を横切る猫岳もはっきりと見られる状況です。天候が急激に悪化するような雰囲気はありません。

 

今日の乗鞍スカイラインは通常通り7時開門

6月19日から20日かけての大雨で、乗鞍スカイラインは6月20日(水)は終日通行止め、6月21日(木)は雨は収まったものの、24時間雨量規制のため、開門は11時30分からとなりました。梅雨の時期は、一旦降り始めると、雨量規制値をすぐに超えてしまうほどの降り方を見せるため、雨が降ったらすぐに通行止めとなる可能性を常に念頭に置いた行動が必要となるほどです。

今朝はまだ雨の様子がないため、乗鞍スカイラインは通常通り7時の開門となります。

 

畳平は気温3℃とやや低め、天候曇 本日はAダイヤ(平日ダイヤ)

畳平の気温は3℃、天候は曇りですが視界は良好とのこと...この時期の気温としては若干低目でしょう。6時現在のほおのき平駐車場の気温は14℃ですから、シャトルバスに乗車するときと下車するときでは10℃以上の温度差となります。夏といえども、防寒着は必ず持参して下さい。

今日のシャトルバスは、晴天時(通常時)のAダイヤ。ただし、今日は平日ですから1時間に1便の運行です。なお、休日のAダイヤは、1時間に1便の平湯温泉発の平日Aダイヤに加えて、ほおのき発がその間に増便されますので30分おきの運行です。

 

タクシー乗り場

バスターミナルにはタクシー乗り場が隣接しています。畳平(乗鞍スカイライン)へは、タクシーを利用することも可能です。

 

少し日が差していたので来てみたけど... 残念ながら今日は...

こちらのタクシーの運転手さん、「朝起きたら雨が止んでいて少し、日差しが指していたので、とりあえず来て見ました。猫岳がまだ見えているので、すぐには崩れないんじゃないかなぁ〜」と、おっしゃっています。

ただ、今日は平日...残念ながら人出がほとんどない状況ですので、上高地の岐阜県側入山拠点である平湯温泉に変更しました。乗鞍周辺には数々の観光地があって、乗鞍スカイライン(畳平)と平湯温泉などの奥飛騨温泉郷との組み合わせ、また、乗鞍と上高地の組み合わせなどの観光ルートがよく知られていて、タクシーの運転手さんもそれらの各拠点で営業されているようです。

 

外来植物種子の除去マット この後の乗鞍スカイラインのコーナーをご覧ください

さて、これまでにも何度かお伝えした外来植物の種子を除去するマット。設置の意義については、この後の乗鞍スカイラインのコーナーをご覧いただければ、ご理解いただけるのではないかと思います。

 

シャトルバスの到着を待つグリーンサポートスタッフの方々

バスツアーなどにおいて畳平という場所は、周辺の温泉地に到着する前に立ち寄る観光地の一つに過ぎないかもしれません。もちろん、畳平は観光地でもありますが、国立公園内の自然保護が求められる地域でもあります。それゆえにツアー客の方々と環境保護との意識の温度差が見られる場合もあり、自然保護の啓蒙活動を行う方々の活動が特に必要でもあると考えられます。

 

シャトルバス始発便 − 畳平へ

シャトルバス始発便は定刻どおりにほおのき平に到着し、乗鞍スカイラインを経由して畳平へと向かいます。

 

【乗鞍スカイライン】

平湯峠 − この先マイカー規制
=シャトルバス乗車はほおのき平駐車場へ=

ここからは乗鞍スカイラインの様子をお伝えします。ほおのき平駐車場から6kmほどのところにある平湯ゲート。乗鞍スカイラインはここから始まります。道路左側に平湯ゲート詰所があり係員が許可車両のチェックなどを行っています。この先はマイカー規制となっていて、バス・タクシー・自転車と特別に許可された車両のみの通行となっています。

平湯峠(平湯ゲート)周辺には、マイカーの駐車場がありますが、シャトルバスの停留所はありません。そのため、ほおのき平駐車場でシャトルバスに乗り換えてください。

これまでは平湯温泉のあかんだな駐車場も乗り換え駐車場としてしてされていましたが、シャトルバスが平湯温泉発着となり、あかんだな駐車場からシャトルバスに乗車することができません。乗鞍スカイラインシャトルバス乗り換え駐車場は、2012シーズン版乗鞍岳マイカー規制・乗り換え駐車場・シャトルバス情報 をご覧ください。(2013シーズン版は作成中です。)

 

昨年の平湯峠付近
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
今週の平湯峠付近

標高1684mの平湯峠ゲートから乗鞍スカイラインを進みます。これまでは昨年よりも緑が濃い状態でしたが、今週は昨年との差があまり感じられません。おそらく、昨年はこの時期に急速に緑が濃くなったと思います。画像を細かく観察しても、新緑のボリュームに違いが見られる点があるものの、それ以外の差はわずかです。

緑の濃淡

今週、特に感じる点は緑の濃淡。

 

新緑のパッチワーク 紅葉のパッチワーク
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.22(2012/10/06〜07) G

深い緑の針葉樹の中に明るい緑の広葉樹が点在していて、パッチワークのような模様を描いています。今現在は緑の濃淡しかありませんが、これが秋を迎えると、右の画像のように見事な模様を描いてくれます。

右の画像は長野県側の県道乗鞍岳線(エコーライン)の様子ですが、乗鞍スカイラインも平湯峠付近ではきれいな紅葉が見られます。

 

昨年の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近)
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
先週の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近)
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2013/06/15〜16) C
今週の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近)
昨年より1週間以上遅い雪解け

マイカー規制前にあった夫婦松料金所を1kmほど進んだ4kmポスト付近の様子。新緑の様子と奥に見られる残雪から、昨年より1週間以上遅く、例年よりやや遅い状況が見られます。

 

雲間から来たアルプスの山並み

雲間からは北アルプスの山々が頭を突き出しています。今日はこの後、午後にかけて雨が続く天候となってしまいます。しかし、遠景の視界は確保される様子は変わらなく続きます。

アスファルトの割れ目からタンポポ

さて、こちらは乗鞍スカイラインの沿道の様子。アスファルトの割れ目からタンポポが株立ちしています。

 

セイヨウタンポポ(外来種) − 総苞片が反り返る
=外来種の侵入は在来種に大きな影響=

ちょうど花が終わって、これから「綿毛」が飛び出そうとしているところ。緑色に囲まれている部分は「総苞片(ソウホウヘン)」と呼ばれる器官で、見た目には萼(ガク)に近いものです。

花(ここでは「綿毛」)を包み込んでいる内総苞片に対して外総苞片が反り返っていて、タンポポを観察する上で、ここが非常に重要なポイントになります。

高山帯に在来種として自生するミヤマタンポポ等の日本古来のタンポポの多くは、外総苞片が内総苞片に重ねあうようになっているに対し、外来種のセイヨウタンポポは、画像のように外総苞片が反り返っている点が、在来種と外来種のタンポポの見分け方です。つまり、この画像のタンポポは外来種のセイヨウタンポポで、繁殖能力が強いこともあって、すでに多くの在来種がセイヨウタンポポに置き換わっています。

外来植物の種子を除去するマットが必要なのは、ご覧のように外来種の侵入で在来種が駆逐されている現状があるからです。

 

標高が上がると空気が冷たくなる

周辺の山にたなびく雲がゆっくりとした動きを見せています。標高が上がるにつれて空気はひんやりとしたものへと変わって行きます。

 

昨年の猫の小屋跡地
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
先週の猫の小屋跡地
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2013/06/15〜16) C
今週の猫の小屋跡地
昨年とほぼ同じ雪解け

さらに進んで、こちらは標高2200m付近の猫の小屋跡地。周辺の雪解けは今週になって完全に終わりました。昨年とほぼ同じ推移で、例年よりも1週間遅い状況です。

 

森林限界を超えて 猫岳の山腹

猫の小屋跡地を過ぎた9kmポストあたりから森林限界を抜けてロケーションが広がります。こちらは猫岳の山腹。出発前のほおのき平駐車場から確認できる箇所です。

 

標高2400メートル − ダケカンバの芽吹き

この付近の標高は2400メートルほどです。長野県側の県道乗鞍岳線(エコーライン)では、ちょうど位ヶ原山荘付近と同じ標高です。そちらと比べると、猫岳山腹のダケカンバは芽吹きが少し遅いようです。

 

雲の流れが風景を立体的に浮かび上がらせる

山肌の谷間には雲が流れ込んでいて、モノトーンな風景のなかでも地形を映し出す効果を生んでいますね。

 

昨年の烏帽子岳
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
先週の烏帽子岳
昨年とほぼ同じ積雪量
昨年の四ッ岳カーブ
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
今週の四ッ岳カーブ
昨年とほぼ同じ積雪量

上段は森林限界を超えて最初に見られる山は23ある乗鞍の峰の一つである烏帽子岳(えぼしだけ標高2550m)。積雪量は昨年とほぼ同じで、例年よりやや多く、1週間程度の差があります。
下段はその先にある乗鞍スカイラインの中でもっとも積雪量の多い箇所を通過する四ッ岳カーブ。こちらも昨年とほぼ同じで、例年よりやや多く、1週間程度の差があります。

雪解けが進んで、昨年との差がほとんどなくなりました。

 

先週の四ッ岳カーブ
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2013/06/15〜16) C
今週の四ッ岳カーブ
道路に近いところの雪解けが目立つ
先週の四ッ岳カーブ
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2013/06/15〜16) C
今週の四ッ岳カーブ
道路に近いところの雪解けが目立つ

四ッ岳カーブを先週と比べると、道路に近いところの雪解けが目立っています。除雪部分が丸みを帯びていています。まとまった雨で雪解けが進んだものと考えられます。

桔梗ヶ原 − 乗鞍スカイラインはこの直線部分だけ長野県側
(岐阜県道5号乗鞍公園線 → 長野県道5号乗鞍公園線)

四ッ岳カーブからさらに進んで、平坦な桔梗ヶ原はノリクラの峰々が一望できます。天候はあまり芳しくありませんが、はっきりとした視界です。標高2650メートルですから、長野県側の大雪渓駐車場付近(標高2600メートル)とほぼ同じ高さです。

話が少し変わりますが、乗鞍岳は岐阜県・長野県の両県にまたがっていて、長野県側の乗鞍高原から畳平に向かう道路は県道乗鞍岳線(長野県道84号乗鞍岳線、通称 エコーライン)で、岐阜県側の平湯峠から畳平に向かう道路は乗鞍スカイライン(岐阜県道5号乗鞍公園線の一部※)であることは、ご存知のことと思います。

長野県側の県道乗鞍岳線は全線が長野県内を走っていますが、岐阜県側の乗鞍スカイラインは一部が長野県側を通っています。
桔梗ヶ原のやや北寄、この画像に映るが該当箇所で、県境は画像のさらに右側にある大丹生岳山頂がとなっていて、乗鞍スカイラインはこの直線部分だけが長野県側を通過しています。そのため、この区間だけは、「岐阜県道5号乗鞍公園線」ではなく「長野県道5号乗鞍公園線」と、なっています。ただし、道路管理はすべて岐阜県が実施しています。

「長野県道5号乗鞍公園線」は、ご覧のわずか500メートルほどの直線しかありませんので、もしかすると、長野県道の中で最も短い県道かもしれません。

※ 岐阜県道乗鞍公園線は国道158号線の分岐点(高山市丹生川町久手細谷)から畳平までの区間で、平湯峠から始まる乗鞍スカイラインは、正確には県道乗鞍公園線の一部分です。

 

昨年の鶴ヶ池雪渓
2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2012/06/22〜23) @
今週の鶴ヶ池雪渓 −例年6月下旬まで滑走可能
昨年・例年より1週間早い雪解け

畳平に到着する手前に鶴ヶ池雪渓が広まります。岐阜県側で唯一滑走が認められているエリアです。畳平から歩いてすぐの場所にあることから、初めてお越しになったスキーヤー・ボーダーの方にも安心してお勧めできる場所です。例年6月下旬まで滑走可能です。

昨年・例年と比べて1週間早い雪解けです。実際に滑走するエリアは、例年とそれほど大きな違いはないものの、その周辺の雪解けが激しく、この週末の滑走が最後となるでしょう。

 

畳平

鶴ヶ池雪渓を過ぎると、乗鞍スカイライン終点の畳平に到着です。 Next


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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