ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.4(2014/05/31〜06/01) D

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(Update:2014/06/05)

 

【稜線へ】

それでは肩の小屋から稜線に向けて出発します。

 

ノリクラガイドマップ 春〜夏スキー 山頂版(別ウインドウ)

肩の小屋より稜線方面の概要は、ノリクラガイドマップ 春〜夏スキー 山頂版 をご覧ください。なお、ツアーコースの状況については、ノリクラガイドマップ 冬〜春スキー版 をご覧下さい。

 

雪解けで肩の小屋から直登は不能に(→右画像の×印) ○印の夏の登山道方面へお願いします
(ハイマツ帯植生保護のため)

先週まではほぼ完全に冠雪していましたので、稜線まで直登することが可能でした。しかし、今週は雪解けが進んで、ハイマツ帯や岩場に阻まれて、直登はできなくなりました。

しかし、左の画像のように、ハイマツ帯に向かって踏み跡ができているため、そちらのほうへ誘導されてしまいます。おそらく数日前までは、ハイマツ部分も冠雪していて、問題はなかったものと思いますが、多くの方がハイマツ帯を歩いてしまうと、影響が大きくなってしまいます。

特にこの付近は肩の小屋から稜線に向かうルートとなっていて、岐阜県側の畳平からお越しになったスキーヤー・登山者のほぼ100%の方が通過するため、ダメージも大きくなってしまいます。そのため、右画像の○印のルート、夏の登山道沿いを進むようお願いいたします。

 

夏の登山道入口 入口部分を過ぎると再び積雪状態

こちらが夏の登山道の入口部分。少し入ると再び積雪状態となります。今回は二日ともかなりザクザクに雪が緩んで、場所によっては膝くらいまで踏み抜くほどでした。

 

肩の小屋への下りルート
×印はハイマツ帯進入のため、○印でお願いします
(抱卵期の雷鳥保護とハイマツ帯保護)

さて、肩の小屋から稜線方面への登りだけでなく、下りでもルートに注意が必要です。こちらも×印のルート方向に向かって踏み跡が付いているため、自然にそちらの方向に下山してしまいますが、その先はハイマツ帯で行き止まりとなってしまいます。付近では雷鳥が生息し、ハイマツ帯の植生保護と、これから抱卵期となる雷鳥の生息保護のため、ハイマツ帯への進入は極力避けるようルートを選んで下さい。

 

大雪渓から稜線ルート
○のルートをお願いします
△のルート − 雪解けが進む
下からは積雪有無がわかりにくいため、あらかじめ○印方向へ

また、長野県側の乗鞍岳春山バスでお越しになった際にも、ハイマツ帯への進入を避けるようなルートを取ってください。右の画像は△のルートを上から見たところです。すでに一部の積雪がなくなりかけています。

また、△ルートは下から登って来たとき、その先に積雪の有無が見えません。おそらく数日中には△ルートの積雪がなくなりますから、ハイマツ帯の植生保護と、これから抱卵期となる雷鳥の生息保護の観点から、左の○印のルートでお願いいたします。

 

稜線目指して...

今日もたくさんの方々が稜線目指して登ります。

 

ザクザクの春雪 − でもアイゼン携行は忘れずに

春雪らしいザクザクの状態で、力を加えずにキックしても甲から足首まで突き刺さるほどで、登りに関してはアイゼンが必要ないほど。しかし、下りでは雪に慣れていない方の場合、アイゼンを装着されたほうが安全と言えます。

 

【稜線】

こちらは蚕玉岳(こだまだけ)〜朝日岳の稜線。画像の左側が蚕玉岳山頂(標高2979メートル)に続き、画像右側が朝日岳山頂(標高2975メートル)に続いています。

 

柔らかな風の中...

正午の稜線の気温は14℃。柔らかい風が心地よく吹き抜けています。

 

今日はノリクラデビュー日和

稜線で休憩されているこちらのご家族。「私は何度も来てますが、この子はノリクラ初めてなんですよ。」こんな日にノリクラデビューが果たせたことは、本当に幸運だと思います。風に吹かれる気持ちよさはこの上ないもので、このような日を狙ってきても、なかなかめぐり合えないものです。

さらに付け加えれば、晴天の日は一年に何度もあるものの、今日は天候以上に風に吹かれる感覚が心地よく、この空気感は、おそらく一年に一度、この時期しか訪れないでしょう。

 

昨年の蚕玉岳〜朝日岳稜線
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) D
先週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.3(2014/05/24〜25) B
今週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
過去5年間の中で最も多い積雪量

こちらが稜線部分。手前が朝日岳方面で、画像に写るなだらかなピークが蚕玉岳、それに続く奥のピークが主峰の剣ヶ峰です。昨年よりも明らかに積雪量が多いことがわかります。過去に遡って見ても、今年は2009年までの5年間の中で最も多い状態です。

 

昨年の権現ヶ池
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) D
今週の権現ヶ池
2012年に次いで多い積雪量
昨年の朝日岳
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) D
今週の朝日岳
過去5年間で最も多い積雪量

上段は御岳の二ノ池に次いで国内二番目の標高に位置する権現ヶ池(ごんげんがいけ、標高2845m)で下段は朝日岳です。権現ヶ池は先週の段階では2009年までの5年間で最も多い状態でしたが、今週は若干雪解けが進んで、2012年に次いで多い状態となっています。また、朝日岳は例年とそれほど大きな違いは見られませんが、やはり過去5年間でもっとも多い状態です。

 

【剣ヶ峰〜蚕玉岳、頂上小屋】

こちらは剣ヶ峰〜蚕玉岳(こだまだけ)稜線。

 

昨年の蚕玉岳山頂付近
2013ノリクラ 雪渓カレンダーVol.4(2013/06/01〜02) E
先週の蚕玉岳山頂付近
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.3(2014/05/24〜25) C
今週の蚕玉岳山頂付近
過去5年間で最も多い積雪量

蚕玉岳山頂は、先週より高さで50センチ以上の雪解けが見られますが、先週と同様、積雪量は過去5年間で最も多い状態が続いています。

 

乗鞍岳頂上小屋 − 雪解けが進みようやく屋根が見えて来た

さて、こちらは剣ヶ峰直下にある乗鞍岳頂上小屋。先週から始まった除雪作業が今日も実施されています。先週と比べて自然融雪もあって、屋根の一部が見えるようになって来ました。

 

掘っても掘ってもなかなか進まない

人の背丈くらいまで掘り進めても、地面まではさらに1メートルほどあります。小屋の窓すらまだ雪の下で、一日に掘り進める作業量もかなり限定されているため、なかなか進みません。

 

蚕玉岳頂上付近 − ゆっくりと昼休み

こちらは蚕玉岳頂上付近。ゆっくりと昼休みの団欒に花を咲かせる方々の姿があります。

 

このひと時が一番楽しい

まだ、お昼過ぎというのに、「今日は次の春山バス下り便で早々に下山します。今日のメインは夜の宴会...また、明日登る予定です。」とのこと。春山バス最終便が到着するまで、がむしゃらに登り返す方もたくさんいらっしゃいますが、今回はお話をお聞きすると、その前の便(大雪渓発13時24分、位ヶ原山荘発13時32分)で、下山されるという方が結構いらっしゃいました。

 

この一本で今シーズンの滑り納め

そして、こちらのボーダーの方は「この一本で今シーズンの滑り納めです。」とのこと。6月に入って、そろそろ滑り納めという声も聞かれるようになって来ました。しかし、中には、稜線に雪がある限り滑り続けるという方もいらっしゃり、そんな方々にとっては、積雪量の多い今年は幸運かもしれません。

 

稜線からの滑走は5月中旬〜6月上旬がベストシーズン

稜線からの大滑降は5月中旬から6月のこの時期が旬といえるでしょう。その前の4月はさらに積雪量が多く、もっとコンディションがよいように思いますが、稜線直下はアイスバーンで、とても楽しく滑走できる状態ではなく、ザクザクに緩んだ春雪は安心して滑走を楽しめます。

 

横幅140メートル − 広大なバーン 全面ザクザクの雪質

稜線の幅は140メートルにも及んで、どこから滑り始めても問題ありません。また、緩んだザクザクの雪質で全面覆われて、硬く締まった箇所は皆無です。

 

昨年の位ヶ原
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) E
今週の位ヶ原
2012年に次いで多い積雪量
昨年の剣ヶ峰直下の岩
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) E
今週の剣ヶ峰直下の岩
2010年に次いで多い積雪量

上段は稜線から滑り降りたところから見る位ヶ原。今週は雪解けが進んで、ハイマツ帯が織り成す唐草模様がはっきりしてきました。昨年よりも積雪量の多い状態となっていますが、例年と比べると積雪量の多かった2012年に次いで多い状態です。

下段の剣ヶ峰直下の岩付近は、昨年よりも積雪量が多いことは一目瞭然ですが、例年と比べると積雪量の多かった2010年に次いで多い状態です。

 

滑りはじめから3分の1地点− 雪解けでハイマツ帯が幅広くなって来た

稜線から県道乗鞍岳線までの区間の約3分の1程度の箇所ですが、雪解けで両側のハイマツ帯が幅広くなって、滑走部分が狭くなってきました。ただし、狭くなったといっても横幅は30〜50メートルもありますから、滑走上の問題は全くありません。

 

バーン表面には細かなピッチが発生 − 今後さらに大きくなって滑りにくくなる

バーン表面を見ると、先週までの完全なフラットな状態から、細かなピッチが広がってきました。現段階では雪が柔らかいため、滑走する上で、ピッチが気になることはありません。しかし、今後、雪解けが進んで雨量が多くなると、さらにピッチが大きくなり、かなり滑りにくいコンディションとなってきます。

 

稜線からの滑走エリアの全景

稜線からの滑走エリアの全景です。画像の右脇にハイマツ帯が写っていますが、すでに人の背丈ほどになっています。雪解けの早いシーズンでは、人の背丈以上になり、雪解けの遅いシーズンでも1メートル程度の高さになっています。この程度の高さになると、ハイマツの中を歩くことはできなくなります。雷鳥や高山植物保護の観点から、ハイマツに進入することは避けることがベストですが、ブッシュの藪漕ぎ以上に歩くことが困難な状態ですから、物理的にハイマツへの進入が阻止されます。

 

県道乗鞍岳線

稜線から約1kmほど滑り降りると県道乗鞍岳線と合流します。

 

切り通しは3.5メートル
ほぼ例年並みの積雪量。

切り通しの高さは3.5メートル。昨年は2.5メートル、2012年は4.2メートル、2011年は2.7メートル、2010年は3〜4メートルで、先週は例年より積雪量の多い状態でしたが、ほぼ例年並みの積雪量になっています。

 

【昨年の今ごろは?】

2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2013/06/01〜02) @

今年の梅雨入りは全国的に早く、乗鞍一帯が属する東海地方は5月28日(火)、関東甲信地方は5月29日(水)に梅雨入りしてしまいました。そのため、梅雨入り発表以降はぐずついた天候が続きましたが、今回取材の6月最初の週末は梅雨の中休みの状態となり、一時的に青空も見られる状態で、まずまずの週末を送ることができました。

取材一日目の6月1日(土)は、まずまずの青空の広がる朝を迎えます。そして、今日から乗鞍岳春山バスは大雪渓まで延長運行されました。大雪渓駐車場から位ヶ原周辺では夜間凍結が心配されたものの、それほど広範囲に凍結する箇所がなく、始発便から予定通りの運行となりました。天候は春山バスが大雪渓に到着した8時すぎから徐々に雲が多くなってきました。それでも、大雪渓に到着するとやって来たスキーヤーの方々が一斉に稜線に向けて出発する様子が見られ、まさにこの時期ならではの賑やかな光景が見られました。日中は日差しがなく、涼しい風が絶えず吹き抜ける状態で、非常に過ごしやすいコンディション。しかし、午後からは周期的に濃霧が立ち込めて、視界が妨げられるほどの状態でしたが、雨に見舞われることなく、穏やかに一日を送ることができました。

取材二日目の6月2日(日)は、曇り空の朝を迎えます。ほおのき平駐車場から望む猫岳方面は周期的に霧がかかるものの、まずまずの天候で、時折薄日が差します。しかし、大雪渓方面に向かうと周期的に山麓から濃霧がわきあがって視界が奪われるときもあり、お昼近くになると、冷たい風が吹き始め上空からパラっと雨粒が落ちてくるのを感じます。そして、午後になると、濃霧に覆われている時間帯のほうが長くなり、15時の畳平では路面が濡れる程度まで雨に見舞われることもありました。しかし、一日を通して見ると、日差しがなくて過ごしやすい状況だったといえます。

大雪渓・稜線付近の積雪量は、全体的に昨年・例年より少なく、2週間程度雪解けが早い状態です。また、先週よりも雪解けスピードが速まっている傾向が見られます。

 

<編集後記>

「乗鞍岳頂上はご自身で体験を...」

「アレ見ると、行った気分になるから、いかなくても十分わかるよ!」
ノリクラ雪渓カレンダーをご覧になった方から、そのような感想を頂くことは大変ありがたいと思っています。特に天空マラソン、乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム、全日本マウンテンサイクリングin乗鞍といった、大会関係のコーナーは、参加される選手にとって有用な情報源となっているようです。

厳冬期はトップページの速報のみの更新となりますが、、当WebSiteでは11月を除けば、ほぼ通年にわたって「今のノリクラ」をお伝えするように心がけています。もちろん、四季によって、取材するエリア(取材できるエリア)が異なるものの、メジャーな場所なのに、あまりご紹介しないエリアもあります。

それは、乗鞍岳山頂(剣ヶ峰山頂)です。乗鞍23峰の中のもっとも高い峰で、サマーシーズンになれば、多くの登山者・観光客の方が訪れます。山頂に向かうまでの情報はお伝えしますが、あえて山頂の様子をあまりお伝えしないのは、取材時間の制約もありますが、せめて、最後の一番おいしいところだけは、ご自身で体験されてはと思うのです。

頂上からの360度のパノラマをぜひともご自身の目で感動していただき、その空気感をご自身の肌で体験するために、当WebSiteをご覧下さればと思っています。

 

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