ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.11(2016/07/23〜24) E
【畳平、お花畑】
畳平 − 今日も数多くのバスツアーが |
畳平は岐阜県側の乗鞍スカイライン、長野県側の県道乗鞍岳線(通称:エコーライン)の終点で、標高2702メートルは自動車道としては国内最高標高地点。標高的に高山帯に入り、日中でも気温が20℃に達することなく、暑さを避けて高山植物を楽しむことができ、今日もバスツアーが数多く訪れています。
森本 誠選手 − 大会に向けたトレーニングに |
もちろん、ヒルクライムのゴールも畳平で、今日も多くのヒルクライマーが訪れました。そんな中、出会ったのが森本 誠選手。8月の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍では数多くの優勝を果たされています。時刻は16時を回り、今日はすでに3本目のヒルクライムとのこと。もちろん、8月の大会に向けてのトレーニングでお越しになっていて、今後も大会に向けた練習に通われるとのことでした。
「今年こそはフルコースで...」 |
このほかにも大会に向けて練習モードで走行される方々がたくさんいらっしゃいましたが、「有名選手に出合えるかな?」と、ちょっと期待を持ちながら、走っていらっしゃる方も多いようで、それがまた、練習に向けたモチベーションにつながるものと思われます。
そして、どの選手もおっしゃるのが、「今年こそはフルコースで...」。悪天候により2年連続で短縮コース開催でしたので、悲願の一言につきますが、こればかりは運を天に任せるしかありません。
畳平お花畑 |
それでは、ここからは、いつものように畳平のお花畑の様子をお伝えします。
入口付近 | モミジカラマツが少しピークを過ぎる |
先週はモミジカラマツの群生が見事でしたが、今週は花の勢いが落ちた感じで、少し寂しい状況です。モミジカラマツはご覧になっている花の部分はすべて雄しべ。花弁はつぼみが開くのと同時に落ちてしまっています。モミジカラマツのように花のように見えている部分が花でないという植物は数多くあります。
ミヤマクロユリもそろそろ終わり | ネバリノギランが目立ってきた |
先週まで見頃が続いていたミヤマクロユリもそろそろ終わり、それにかわってネバリノギランが目立ってきました。例年であればお盆頃に咲く花です。
チングルマの由来は風車(稚児車)に似ているところから |
こちらはチングルマ。白い花が終わって風車状態に...先端が撚って中央が膨らんだ状態が子供の風車(稚児車)に似ていることからチングルマと呼ばれますので、花の時期よりもこちらの方が「本番」というわけです。
今回一番目立つのはヨツバシオガマ |
ヨツバシオガマは先週あたりから目に留まるようになってきましたが、今週はかなり目立つ存在。今回一番の高山賞物ではないでしょうか?
コバイケイソウ − ほとんど咲いていない |
さて、今年は不作のコバイケイソウ。ご覧のように株はあるのにほとんど咲いていません。
こちらは2013年のコバイケイソウ。この時は当たり年。
⇔ | ||
2013年のコバイケイソウ(当たり年) 2013ノリクラ 雪渓カレンダーVol.14(2013/08/10〜11) E |
今回のコバイケイソウ、全く咲いていません |
こちらの2枚は撮影角度が違いますが、同じ場所のコバイケイソウ。左の2013年と右の本日の違いは一目稜線。開花は例年8月上旬ですから、もう少し待ってもよいかもしれませんが、おそらく花はつけないでしょう。
遊歩道の分岐点 |
遊歩道の分岐点をさらに進みます。
木道よりも高く生い茂る | ミヤマクロスゲ |
先週はミヤマキンポウゲがかなり目立つ存在でしたが、少し黄色の花が少なくなっています。そのかわり、木道よりも高く生い茂るようになってきたのは、ミヤマクロスゲ。ちゃんとこれでも高山植物です。秋には小麦色に枯れて、草紅葉としてお花畑を色づけます。
木道の間にも注目(↓) |
さて、木道の間にもたくさんの高山植物があります。
ヨツバシオガマだらけ | 「葉まで美しい」 − 花に負けない彩 |
ヨツバシオガマだらけ...「葉まで美しい」と形容されているだけあって、葉の模様は花にも負けない彩です。
ハクサンボウフウ | ウサギギク |
そして、ハクサンボウフウの群生は先週と同じく続いていて、ウサギギクが咲き始めました。
そして、折り返し地点まで差し掛かると...
ミヤマクロユリは実ができている |
ミヤマクロユリはもう実ができていました。まだ7月だというのに気の早いことです。畳平お花畑は昨年より2週間ほど早い状況で、これから晩夏〜秋の花へとシフトして行くことともいます。
畳平お花畑にはコマクサは咲いていません |
畳平お花畑は数多くの高山植物が咲いているにも関わらず、唯一咲いていないのは高山植物の女王と呼ばれるコマクサ。
多数咲いているのは大黒岳入口など砂礫地 | お花畑はコマクサの自生には適していません |
お花畑は水分の多い場所で、それを好む高山植物が分布していて、コマクサのような乾燥した砂礫地に自生する高山植物とは分布が異なっているだけのことで、大黒岳の入口付近には数多くのコマクサが見られます。畳平から少し足を延ばせば、ご覧になれるはずです。
【昨年の今ごろは?】
20日(月)に関東甲信地方が、21日に東海地方の梅雨明けが発表され、最初の週末を迎えました。台風12号の接近が危ぶまれましたが、ほとんどそんなことを感じさせない二日間でした。
7月25日(土)は、若干薄い雲が覆う晴天でまずまずの天候。気温自体もそれほど高くはないものの、体感的にはそれ以上に心地よさを感じるひんやりとした空気の流れがあって、夏スキーもヒルクライムも何をするにしても快適な一日でした。また、畳平お花畑はクマ出没のため、終日閉鎖となり、そろそろ、「クマ出没シーズン」がやってきたようです。
7月26日(日)は、昨日以上にきれいに晴れ渡った一日。午前中は澄んできれいな秋のような青空で、午後になるとその深い青空にモクモクとした夏雲が湧き上がり、秋の青空と夏の入道雲が同居して、シーズンを通して見ても、これ以上の見事な晴天はなかなかお目にかかることのできないものでした。
稜線付近の登山道の積雪は、2週間前になくなりました。また、大雪渓から肩の小屋への登山道も、現在積雪が残っているのは、大雪渓の登山道入口を85メートル進んだ先に66メートル残っています。晴れた日は問題ありませんが、冷え込んだ日は下山が苦労すると思われます。それより上部の肩の小屋方面は一部積雪箇所があるものの、完全に夏道となり、登山道周辺ではチングルマなどが咲き始めました。
また、この1週間の大雪渓は、梅雨明けと同時に気温も高く、やや雪解けスピードが速まった感じがあるものの、ほぼ昨年並みかやや早い状態にとどまっています。上部では昨年より1週間早い雪解け、中段・下部は昨年並みかやや遅い状況です。ただし、再氷結による氷柱が全面的にみられるようになってきましたので、ボールをセットされるグループは鍬などでのバーン整備が必要かと思います。
<編集後記>
「夏の山の天気。」
梅雨が明けるとスカッと晴れ渡るのは「梅雨明け十日」という通りで、その後は、朝から晩まで晴れあがるということは実はそれほど多くありません。大雪渓で一日中、高山帯にいると、そのてんきの移り変わりはよくわかるもの。
代表的なのが夕立で、これは朝は雲一つない見事な天候だったにも関わらず、昼前から山麓からもくもくと雲が湧き上がり、次第に曇り空となり、夕方になって、突然のしゅう雨に見舞われるというもので、夏山特有の天候とでしょう。時には雷鳴を伴って、激しく降ることもありますから注意が必要です。
そして、先週もあったのですが、見事な雲海が広がること。山麓では今にも泣きそうなどんよりとした曇り空なのに、山頂方面は雲海が眼下に広がる快晴が広がる状況。ただ、時間とともに解消されることが多く、日中は山麓も晴れ間となることが多いようです。
いずれにしても、夏山は朝が勝負...暑くなる前に大雪渓まで登ってしまい、一日を涼しいところで過ごして、また山麓に戻るという夏スキーヤーの生活が暑さしらずで良いかもしれません。
Copyright (C) 乗鞍大雪渓WebSite |
|