ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版

Vol.1(2017/04/01) B

 

 

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(Update:2016/12/29)

 

 【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】

位ヶ原急斜面

こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。

 

位ヶ原山荘に向かうための案内看板 − 悪天候時はここで進退の判断を決めること

こちらは位ヶ原山荘に向かうための案内看板。ここには、「この先は今までのような道はありません。悪天候時はルートを見失いやすいです。最近、単独行の道迷い遭難が多いです。経験・自身のない方は無理せずここで引き返してください。」と、記されています。

この先は森林限界を超えてオープンバーンになりますから、今日のような視界状況では確実に方角を見失うことになります。方角を見失ってから(迷ってから)戻ろうとしても、もうその時点では戻れませんから、この看板の位置で、この先、進んでもよいのか・撤退すべきかを判断しなければなりません。

 

2015年の位ヶ原急斜面
2015ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.3(2015/04/04) C
2016年の位ヶ原急斜面
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D

今回の位ヶ原急斜面

位ヶ原急斜面の積雪は、昨年より2メートル近く多い状態ですが、一昨年とほぼ同じレベルです。

 

硬めの下地に軽い新雪が20センチ 今日はここで下山 − きっぱりと撤退を決断することが大事

バーン状況は、硬めの下地に軽い新雪が20センチほど積もっている状況。まずまずのパウダーランが楽しめます。今日は位ヶ原山荘に宿泊という方は、位ヶ原山荘に向かう方は右の樹林帯へのショートカットルートを利用すれば、視界の悪い位ヶ原に立ち入る必要はありません。

撤退することにためらいがあるかもしれませんが、あえてきっぱりと引き返すことが大事。しっかりと区切りをつけることが安全に楽しむ秘訣です。

 

13時過ぎに急速に天候回復

しかし、13時を境に急激に天候が回復してきました。しかし、擬似晴天という場合も中にはありますので注意は必要です。

 

位ヶ原山荘へのショートカットルート(赤布)

位ヶ原急斜面の右側に沿って登ると、ご覧のように赤布を見つけられるはずです。これが先ほどの看板にも示された位ヶ原山荘に向かうショートカットルートを示す赤布です。およそ10〜20メートル間隔で設置されていますので、濃霧時も迷うことはないと思います。ここから位ヶ原山荘まで40〜50分と看板に記されています。

 

山麓方面は雲に包まれている

天気が良いのは山頂方面だけのようで、山麓は雲につつまれたまま。結局、この日は山麓からは山頂を見ることはできませんでした。

 

【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】

【本物】左の谷−位ヶ原急斜面(正規下山ルート) 【偽物】右の谷−伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり)

さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...

この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)

 

位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい
ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。

 

伊奈川の谷−大きな岩場があるのが特徴(中央)

伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。

 

 

【位ヶ原】

昨年の位ヶ原
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
今回の位ヶ原
昨年より75センチ多く、一昨年より90センチも多い
=例年よりも積雪量が多い=

ツアーコース位ヶ原急斜面を登りきった先より、森林限界を超えて位ヶ原の台地に入ります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化します。もし、急激に雲が流れ込んで視界が阻まれるようになったら、急いで引き返す必要があります。

今年の位ヶ原は例年より積雪量が多く、昨年より75センチ多く、一昨年より90センチも多い状態です。

 

剣ヶ峰方面(左)と高天ヶ原方面(右)

位ヶ原からは左に剣ヶ峰方面、右に摩利支天岳方面を望むことができます。この二つを詳細にみると...(↓)

昨年の剣ヶ峰方面
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
今回の剣ヶ峰方面
昨年の摩利支天岳方面
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
今回の摩利支天岳方面

剣ヶ峰方面は昨年とそれほど変わらない状況が見受けられますが、摩利支天岳方面は明らかに積雪量が多いことがわかります。

 

【大雪渓下部】

最後に大雪渓下部の様子をお伝えします。

 

2015年の大雪渓入口
2015ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.3(2015/04/04) C

2015年の大雪渓入口
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D

今回の大雪渓入口
昨年より50センチ多く、一昨年とほぼ同じ

昨年と比べて50センチ積雪が多く、積雪の多かった一昨年とほぼ同じ状態です。

 

昨年のモーグルコースの岩
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
今年は3月中旬に姿が見えなくなりました
(例年並みの状況)

上段は昨年の大雪渓下部にあるモーグルコースの岩周辺の模様。大雪渓の中で最も遅くまで雪に埋まらず残っています。例年、モーグルコースの岩は3月中旬頃には完全に埋まっていまい、今年も3月中旬に姿が見えなくなりました。今後雪解けが進んで5月下旬ごろには再び姿が現れ、雪解けの指標になります。

 

トイレ・避難小屋方面

大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。

トイレ小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降

避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。例年よりもやや多い積雪状況です。

 

大雪渓の積雪は4月下旬にピークを迎える

ツアーコース内よりも、大雪渓・位ヶ原の新雪のほうが重たい雪質でした。おそらく、日差しの影響を受けて緩んでしまったものと考えられます。なお、この付近の積雪量は、これから増加する時期に入り、例年、4月下旬にピークを迎えます。

 

<編集後記>

「今シーズンの冬の気候を振り返る...」

今回から春シーズンに向けたノリクラ雪渓カレンダープレリリース版を開始しましたが、今シーズンの厳冬期の天候状況をまとめておきたいと思います。

 

下の表はアメダス(観測地点:奈川)の2016年12月〜2017年3月の月平均の気象統計・ツアーコース積雪量です。

    降水量
(mm)
平均気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)

平均風速
(m/s)

日照時間
(時間)

ツアーコース積雪量前年比
3番標識
(積雪量)
位ヶ原急斜面
12月 平年 76.8 -0.7 4.9 -5.9 1.3 106.8
2014 56.5 -2.1 2.8 -6.8 1.7 91.6 0 -
2015 177.5 -2.6 1.3 -6.4 1.9 70 0 -
2016 108.5 1.2 6.3 -3.4 1.7 113.6  -50 -  
今年 148.5 -0.1 6.0 -5.7 1.7 120.5 +25
(85cm)
-  
1月 平年 85.9 -3.6 1.5 -9.2 1.3 106.5
2014 66 -4.4 1.5 -10.9 1.8 145.3 -40 -200
2015 102.5 -3.4 1.2 -8.4 1.7 124.9 +40 +100
2016 124 -2.8 2.4 -7.6 1.8 110.9 -30 -200  
今年 57.0 -3.8 1.5 -9.1 1.8 118.3 +35
(130cm)
-200  
2月 平年 99.2 -3.2 2.5 -9.1 1.3 122.8
2014 124 -4.4 1.7 -10.4 1.7 167.2 -100 -200
2015 41.5 -3.2 2.4 -9.3 1.7 125.9 +30 +200
2016 119 -2.4 3.4 -8.4 1.9 144.9 -30 -200  
今年 91.5 -3.1 2.8 -9.2 1.9 142.2 +78
(165cm)
   
3月 平年 158.1 0.6 6.7 -5.2 1.3 155.5
2014 256.5 0.8 6.1 -4.5 1.8 157.3 -100 -150
2015 134.5 1.0 7.6 -4.6 1.7 157.7 +100 +200
2016 66 1.4 17 -9.8 1.8 103 -120 -300  
今年 27.0 -0.3 5.7 -5.8 1.7 171.1 +75
(160cm)
   

⇒ 1月以降は降水量が少なく気温が低め。特に3月が顕著で雪解けが進まない状態に

今シーズンの序盤は、昨年ほど深刻ではなかったものの、年明けまでやや雪の少ない状態が見られました。1月中旬からまとまった降雪が見られ、一気に平年並みの積雪量になりました。ただ、2月から3月にかけては大雪と呼べるほどの降雪はなく、3月上旬ごろに見られる最大積雪量は例年よりもやや少ない状態にとどまりました。しかし、3月は降雪は少なかったものの、気温の低い日が続き、雪解けが進まず、場所によっては例年以上の降雪量を維持している状態です。

また、位ヶ原は例年以上の積雪量がみられ、また、大雪渓方面はこれから積雪量が増加する時期ですので、今年の春山シーズン、及び、夏スキーシーズンの雪不足は、さほど懸念する必要がないかと考えられます。


 


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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