ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.1(2015/05/09) C

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(Update:2015/05/14)

  

【ツアーコースの積雪状況、下山滑走の可否は】

ツアーコース − 位ヶ原急斜面

ここからはツアーコースの積雪状況をお伝えします。全体的には昨年よりも積雪量は少ないものの、ツアーコース滑走可否のカギを握る入口急斜面の積雪量がそれほど少なくないため、まだ下山滑走可能な状況です。

 

昨年の位ヶ原急斜面
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2014/05/10) C
先週の位ヶ原急斜面
(2015/05/02)
今週の位ヶ原急斜面
先週より30センチ減少、昨年より50センチ少ない 

ツアーコース最上部の位ヶ原急斜面は、先週より30センチ減少して、昨年より50センチほど少ない状況です。

 

県道乗鞍岳線の除雪(11号カーブ付近)

こちらはツアーコース位ヶ原急斜面の上部。2ページ目でもお伝えした位ヶ原山荘から除雪が進められた最先端部分で、位ヶ原山荘から先へ約1.5kmまで到達しています。

 

5月8日(金)の除雪作業時の様子

こちらは5月8日(金)の除雪作業時の様子。ちょうどツアーコース入口手前まで道路が出ている様子がわかります。

 

昨年の6番標識手前の谷
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2014/05/10) C
今週の6番標識手前の谷
雪解けでウェーブがやや目立つようになる

さらに下って、6番標識の下にあるウェーブ状の箇所。こちらは昨年とほぼ同じ状況。雪解けとともにウェーブが目立つようになってきましたので、下山滑走にはご注意ください。

 

バーンは所々でコブ

ゴールデンウィーク期間中は多くの方が下山滑走されたため、バーンは所々でコブができています。今後、滑走人数が少なくなるとコブは小さくなってくると思います。しかし、それと引き換えに、バーンがかなり汚れてきます。

 

昨年の5番標識
2014ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.1(2014/05/10) C
先週の5番標識
(2015/05/02)
今週の5番標識
先週より50センチ減少
昨年より60センチ少ない

こちらは5番標識。積雪量は先週より50センチ減少し、昨年よりも60センチ少ない状況です。

 

昨年の3番標識
2014ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.1(2014/05/10) C
先週の3番標識
(2015/05/02)
今週の5番標識
先週より50センチ減少
昨年より60センチ少ない

こちらはツアーコース中間付近の3番標識。先週より50センチ減少し、昨年より60センチ少ない状況。すでに地面に達しているため、これ以上の減少はありません。

 

3番標識付近からブッシュが多くなる 2番標識付近 − 次週末にはバーンが途切れる可能性

3番標識付近からブッシュが多くなり、バーンを狭めようとしています。そして、右の2番標識付近はスキーヤー一人分の滑走スペースしかないため、次週末にはバーンが途切れてしまう可能性があります。

 

1番標識付近 − 切り株が目立つ

そして、1番標識下のエリアは切り株がかなり目立ちますが、まだまだ滑走可能状態です。

 

昨年の入口急斜面上端
2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.1(2014/05/10) C
今週の入口急斜面上端
この部分が人の背丈以上のブッシュが生い茂る

ツアーコースの下山滑走のカギを握るのがこちらの入口急斜面の最上端の箇所。この部分は人の背丈以上のブッシュがあって、雪解けが終わると立ち入ることが困難な状況となり、歩いて下山することは困難です。現時点ではかろうじて下山可能で、昨年と比べると若干積雪量が少ないものの、ブッシュが存在する状況での下山滑走に慣れている方なら、次週末もかろうじて下山可能かと考えられます。(←ただし、保証はできません...)

 

昨年の入口急斜面
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2014/05/10) C
今週の入口急斜面
昨年より若干少ない

入口急斜面を下から見た画像でも、手前の切り株の大きさから、昨年より若干積雪量が少ないことがわかります。

 

かもしかゲレンデ最上部 − 林の中を滑る

入口急斜面を下った先のかもしかゲレンデ最上部は、ゲレンデ部分には積雪はありませんが、隣の林の中を何とか滑走することができます。おそらく、こちらは1週間程度で滑走できなくなります。その後は歩いて下山となります。また、クマザサもかなり厄介な状態になりますが、大半が芝刈りしてありますので、クマザサの中をジャングルのようにかき分けて進む距離はそれほど長くはありません。

 

最終的にはかもしかゲレンデ上部の初心者コースまで かもしかゲレンデ最下部 − 歩きながら三本滝まで滑走

最終的にはかもしかゲレンデ上部の初心者コースまで何とか滑走可能で、その後も、車道や雪のないところを歩いて行きながら三本滝レストハウス前付近まで滑走できます。

 

【5月10日(日)、天候は回復するものの強風・突風の一日】

強風 − 山頂には雲が流れ続ける

さて、これまでは取材一日目(5月9日(土))の吹雪の様子を中心にお伝えしてきましたが、このコーナーでは取材二日目の5月10日(日)の様子をお伝えします。二日目はきれいな青空に恵まれましたが、乗鞍高原では朝の6時ごろから猛烈な強風に見舞われ、また、山頂方面には絶えず雲の帯が流れ続ける様子が確認できます。

 

水芭蕉は例年並み、スモモ・桜は1週間以上早い

乗鞍高原の今年の春は本当に早く訪れています。水芭蕉はほぼ例年並みでしたが、木々の緑やスモモ・桜は1週間以上早い状況です。

 

春山バス始発便は5台運行 − 強風でバス停が倒れる

6時の三本滝レストハウス前駐車場は、アスファルト部分にまだ空きのある状態でしたが、その後、続々とスキーヤー・ボーダーの方々お越しになり、7時過ぎには未舗装部分もかなり埋まる状態になりました。そして、乗鞍岳春山バス始発便は5台運行され、いつもの週末並みの人出です。また、三本滝でもひどい強風が吹き抜けていて、停留所の標識は起こしても再び倒れてしまう状況でした。

 

位ヶ原山荘、気温3℃

こちらは乗鞍岳春山バス始発便が到着した8時過ぎの位ヶ原山荘。気温は3℃まで冷え込み、鉛色の空が激しく流れる状況。朝一番で道路パトロールをされた際には風速20メートル程度の風が吹き抜けていたとのことでした。

 

天候は回復するが強風が続く

そんな天候も、徐々に雲が抜けて行き、頭上に青空がのぞき始めるのは9時過ぎから。ただし、その後も激しく雲が流れる様子は続きます。バーンは昨日の降雪が冷えてかたまり、シールのグリップが効きにくい状態です。ただ、表面の下の層は柔らかい部分があって、アイゼンを装着すれば問題ない状態です。

 

ハードバーンで大雪渓で引き返す

日が高くなってもバーン表面が緩まないため、多くのスキーヤー・ボーダーの方々は、稜線への谷に入る手前の大雪渓上部で今日の登行を打ち止めにされていました。強風が吹き抜ける中でシールを外す作業は結構面倒なもので、仮にシールのグリップが効いて、もう少し先まで行けそうな状況だったとしても、その先のテカテカの急斜面で、シールの取り外しなど滑走の準備を行うことは、スキー・ボードを流してしまったり滑落する危険を伴うため、特に初心者をお連れの場合は、安全が確保できる範囲内での行動が必要となります。

 

稜線付近 − お昼になって少し緩むが厳しいコンディション

もちろん、この先に向かった方もいらっしゃいますが、大半がアイゼンを装着されていて、お昼近くになって若干バーンも緩んでからは、シールでお越しの方も見えました。

 

蚕玉岳山頂 − 激しい突風が続く

大雪渓付近でもかなりの強風でしたが、蚕玉岳山頂は激しい突風で、バランスを崩すとそのまま谷に落とされてしまう危険性を感じたほどです。お昼ごろにはご覧のようにすっきりとした天候となりました。また、バーンは昨日の降雪が10センチ程度まばらに残り、それが冷えて固まって滑走しやすいという状況ではありませんでした。

この二日間は厳しい状況となりました。春山とはいえども冬の顔をのぞかせることもあり、装備・行動ともに適切さが求められます。

 

【昨年の今ごろは?】

ゴールデンウィーク期間中の大型連休が終わりました。今年の連休は前半と後半に分割されましたが、中間の平日に天候が崩れた以外は、よい天気に恵まれた日が多く、乗鞍岳春山バスは夜間凍結や積雪に伴う運休もなく、おそらく大型連休中に問題なく全便運行されたのは、今年が初めてのことだったと思います。

今回より、2014シーズン ノリクラ雪渓カレンダー正式版の連載を開始いたします。10月末までの約半年間は、6月末では稜線からの大滑降が楽しめる春スキー、そして、7月以降は夏スキーとヒルクライム、9月の紅葉へとノリクラの季節が移ろって行きますが、それぞれの季節で一番気になるノリクラの情報をお届けしたいと考えております。

さて、前日の5月9日(金)は、不安定な天候となり、山頂方面はもとより、山麓の乗鞍高原でも霰(あられ)が降る状況でした。そのため、乗鞍岳春山バスは始発便が運休となってしまったものの、2便目からは通常運行されました。そのため、出発が若干遅くなってしまったものの、多くの方が山頂方面へと向かう様子が見られました。昨日降ったばかりの新雪ですからパウダーを少しは期待したものの、肩の小屋より上部はガチガチバーン...まだまだアイゼンが手放せないコンディションが続きます。

また、ツアーコースでの下山滑走はかろうじて可能な状況でしたが、問題なく下山滑走できるのは、おそらく今回が最後となるでしょう。

 

<編集後記>

「大型連休中の出来事から(春山の安全対策・観光対策)...」

5月2日(土)の速報でもお伝えしましたが、素手でザックもストックも持たず、スニーカーで稜線直下まで雪の中を登ってきた一般観光客の方がいらっしゃいました。この日は雪が柔らかく、また、他の登山者・スキーヤーのツボ足のトレースがあったため、それを足掛かりに登ってくることができました。しかし、下山の段階になって足元がおぼつかない状態になり、下山が困難になってしまいました。十分な装備の登山者が一斉に登る中、同じように山頂に登りたいという気持ちが先に立って、その様な行動に出たものと思いますが、一旦、事故が発生すると、自己責任では済まない状況となり、軽率な行動と言わざるを得ません...

...と、ここまでの内容をまとめると、「一般観光客はこれだから困る!」という事で話が終わってしまいますが、それだけの問題ではないと思うのです。
春山バスが到着した位ヶ原山荘周辺は、雪以外のものがなく、一般観光客が次便で下山するまでの時間を費やすだけの観光要素がないというのが問題であり、また、「春山(雪山)=冬山」という意識付けが一般観光客に不足している点も問題です。

例年なら、位ヶ原山荘より1km〜2kmほど先まで除雪が進んでいて、一般観光客の方も、ある程度のところまで雪の回廊の車道を歩いて楽しむことができましたが、今年は除雪が遅れて位ヶ原山荘までしか除雪されなかったことから、雪の回廊を楽しむことができなかったことも、一般観光客が雪山へ入り込む原因となったと考えられます。

乗鞍岳春山バスは、一般観光客の利用者が年々増加し、朝の始発便だけはほとんどが雪山入山者(スキーヤー・登山者など)ですが、全4便を見ると、一般観光客が雪山入山者を上回る状況で、一般観光客への本格的な観光対応と安全対策が必要です。観光客も見るところがない(楽しむことがない)と、どうしても登山者の跡を追って、入山してしまうものです。

さらには、装備を整えた雪山入山者でも下山ルートを間違えているケースが多く、遭難防止の観点から位ヶ原周辺で「挙動不審」な方に声をかけると、その多くが「位ヶ原山荘へ下山して春山バス下り便で帰るつもりが、他のスキーヤーやトレースについて行ってしまい、ツアーコース方面へ間違って進んでいた」というような道迷いのケースで、この時点ですでに遭難しているといってもよい状態です。

今年の大型連休中の長野県内の山岳遭難は、昨年より4件多い19件と長野県警より発表されています。しかし、この19件は氷山の一角で、その裾野にはこのように事故に至らなかった多数のケースが潜んでいると思われます。

 

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