ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.6(2016/06/17〜18) @
今回は6月18日(日)に乗鞍天空マラソンが開催される都合から、取材を一日前倒しいたしました。なお、乗鞍天空マラソンの特集については、7月上旬掲載予定ですので、そちらも合わせてご覧ください。
前回のノリクラ雪渓カレンダーでも申し上げましたが、今年はいろいろなものが足早に進んでいます。ただ、すべてが夏モードかといえばそうではなく、大雪渓での夏スキーはほぼハイシーズン並みの賑わいになっているにも関わらず、登山道にはまだ残雪が残っている状態で、夏と春が同居しています。そのため、春〜初夏の時期に必要な稜線付近の積雪情報と、夏のハイシーズンに必要な大雪渓や畳平お花畑の情報など多岐にお伝えする必要もあり、掲載量が多くなりご覧になりにくい点があるかと思いますが、ご了承のほどお願いいたします。
6月17日(金)は、天気予報よりも天候の回復が遅く、昨晩からの雨がまだ続いています。雨は次第に収まってくるものの、濃霧がお昼すぎまで続き、視界は数十メートルと全く撮影にならない状態。畳平の気温は5℃前後を推移し、厚手のグローブが欲しいくらいの状況です。午後になって、霧の合間に視界が開けるタイミングが少しずつ増えてくるものの、山頂付近まではっきり確認できる上になるのは14時過ぎで、青空が広がるようになるのは15時以降と、時間を無駄にしたような一日でした。そして、最終バスが出発する頃の畳平では熊の出没があり、この時期としては、今年は例年になく熊の目撃情報が多くなっています。
6月18日(土)は、打って変わって見事な快晴。日差しの強さや空気の雰囲気は、梅雨明け直後の真夏そのもの...ただ、雪渓を流れる空気の心地よさはこの上なく、今日のような日が毎日続けばと思うほどです。そして、午後からは乗鞍天空マラソンの受付会場である観光センターに向かいましたが、大雪渓と比べてしまうと山麓は暑い!快晴の空に入道雲が湧き上がるようになり、本当に梅雨明けしたような錯覚さえ感じる一日でした。
それでは、二日間の様子をご覧ください。
【6月17日(金)、ほおのき平駐車場】
ほおのき平駐車場 − 雨・濃霧 |
今回は1日目と2日目の内容がいつもとは逆で、1日目に岐阜県側ほおのき平駐車場から乗鞍スカイラインで畳平に入ります。今朝のほおのき平の天候は、昨晩から続く雨で気温は15℃です。全体的に視界が悪い状態です。
乗鞍岳は岐阜・長野の両県にまたがり、双方から入山できます。ほおのき平駐車場は、岐阜県側の入山口で、シャトルバスの発着場所です。なお、長野県側の入山口・シャトルバス発着場所は、乗鞍高原の観光センターです。
バスターミナル |
バスターミナル入口には、朝一番で畳平の天候が入口に掲示されます。
今朝の畳平の天候 | 通常時のBダイヤ(1時間に1便) |
今朝の畳平の天候は雨、気温6℃で視界不良とのこと。但し書きのとおり、バスは運行されるものの、自転車は通行止です。乗鞍スカイラインは、時間雨量・24時間雨量、風速、積雪凍結などによって通行規制が実施されますが、濃霧については規定はありません。しかし、自転車は安全上の観点から濃霧と強風による通行止めが実施されます。
今日のシャトルバスは正常時のBダイヤでの運行です。昨年までは正常時のAダイヤ(平日1時間1便、休日30分1便)と雨天時のBダイヤ(減便運行)の二通りでしたが、今年は従来のAダイヤは夏季の繁忙期と秋季の休日のみ適用し、それ以外の日の正常時は1時間1便の「Bダイヤ」とし(従来の平日Aダイヤ)、雨天時は減便運行を「Cダイヤ」(従来のBダイヤ)に変更されました。
Cダイヤは前日12時に発表された当日6〜12時の降水確率によって適用され、前日夕方に決定されます。したがって、今回のように当日雨であっても、前日の天気予報が晴れならば、Bダイヤが適用されます。
雨脚が強くなる | 不安そうに眺める乗客 |
まとまった雨脚を見せる中、不安そうにその様子を眺める乗客の方々。昨日までの天気予報であれば、雨は明け方までには収まる予定でした。ノリクラは岐阜県が属する東海地方と長野県が属する関東甲信地方の両エリアにまたがるため、どちらのエリアからも端っこに位置し、どちらか一方の天気予報だけでは判断が困難です。そればかりが原因とは言えないと思いますが、予報通りに当たらないことがしばしばあります。
シャトルバス始発便 |
そして、6時55分、始発のシャトルバスが畳平に向けて出発します。
【乗鞍スカイラインを行く】
平湯峠−ここから乗鞍スカイライン、マイカー規制 |
それでは、ここからは乗鞍スカイラインの様子をお伝えします。こちらは乗鞍スカイライン基点の平湯峠。ほおのき平駐車場から約6kmほど進んだ所にあり、この先は2003年からマイカー規制の対象区間とされ、バス・タクシーや自転車など限られた車両のみの通行となります。
前のコーナーでももう押し上げた通り、本日は視界不良のため、自転車のみ通行禁止となりました。
最近の乗鞍岳入込数は、マイカー規制初年度の平成15年の23万人から年々減少し、昨年は12万人と過去最低となってしまいました。しかし、全体の入れ込み数が激減する中、自転車入れ込み数は逆に急増していて、今年は前年比166%増の7227名でした。入込数全体の割合からすればわずかな数字ですが、166%という急増ぶりには目を見張るものがあります。
拡大 |
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夫婦松駐車場 | 上嶋清一翁顕彰碑 乗鞍スカイラインの前身の軍用道路の建設に貢献 |
さて、平湯峠から乗鞍スカイラインに入って3kmに夫婦松駐車場があります。その奥に大きな顕彰碑が建立されています。
石碑には「上嶋清一翁顕彰碑」と書かれています。乗鞍スカイラインの前身は戦前の軍用道路だったことは有名なことですが、当時3メートル幅で工事を実施する軍に対して、濃飛自動車乗合株式会社の社長だった上嶋精一氏は、将来戦争が終わって軍用道路が払い下げられれば、登山バスの運行も可能になること見据え、道幅を3.6メートルで工事するよう提唱し、拡幅分の費用を全額負担されたとのこと。拡幅分は総工費42万円のうち8万円ですが、当時の濃飛自動車の全従業員の給料の2年分に相当する高額で、その後の返済には苦労されたとのことです。
軍用道路は昭和17年に完成し、終戦を迎えて県道に編入されるものの、戦後直後、誰もが登山バス運行など実現するとは思わなかった中、関係方面に強く働きかけ、昭和24年に実現できました。この顕彰碑は昭和48年の乗鞍スカイライン完成時に建てられたものですが、上嶋氏の功績がなければ、現在の乗鞍スカイラインの発展はなかったものと考えられます。(参考文献:雲上銀座への道瀬口貞夫著)
夫婦松 | 4kmポスト手前の展望台 |
夫婦松駐車場を先に進むと、道路の真ん中に大木が1本立っています。これが夫婦松です。実は10年以上前になるかと思いますが、それまではちゃんと2本並んで立っていて、その姿から夫婦松と呼ばれるようになったようです。
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昨年の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近) 2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.7(2015/06/19〜20) @ |
今回の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近) もう積雪はありません |
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昨年の猫の小屋跡地 2015ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2015/06/19〜20) @ |
今回の猫の小屋跡地 もう積雪はありません |
上段は夫婦松駐車場を1kmほど進んだ4kmポスト付近の様子(標高2050m)。そして、下段は標高2200m付近の猫の小屋跡地。いずれも積雪はもうありません。例年では、ちょうど6月中旬ごろに積雪がなくなる時期です。
憩橋のせせらぎ −
昨日からの雨でかなりの水量 =24時間雨量が70mmを超えると通行止め= |
こちらは6kmポスト付近の憩橋の下を流れるせせらぎ。普段はほとんど流れのない沢ですがご覧のとおり、かなりの水量があって、6時時点の24時間雨量が48mmでした。乗鞍スカイラインの24時間雨量の規制値は70mmで通行止めとなります。まだ、規制値には至らないレベルですが、梅雨末期の激しい降雨だと、あっという間に20〜30mmを超えてしまい、開門時間中であっても、途中から通行止めにすることは多々あります。
何も見えない |
そして、森林限界を超えても視界は一向に変化はありません。
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昨年の四ッ岳カーブ 2015ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2015/06/19〜20) @ |
今回の四ッ岳カーブ 昨年・例年より1週間早い雪解け |
乗鞍スカイラインの中でもっとも積雪量の多い箇所を通過する四ッ岳カーブで11kmポスト付近の様子。左は昨年の画像で、右は今週のもの。先週と同様に、昨年・例年と比べて1週間早い雪解けを見せています。
終日濃霧 |
午前中は完全にホワイトアウトで、視界30メートル程度しかありませんでした。こちらの2枚の画像は夕方撮影しなおしたものですが、今日はほぼ終始濃霧に包まれた一日でした。
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昨年の鶴ヶ池雪渓 2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.7(2015/06/19〜20) @ |
今回の鶴ヶ池雪渓 今シーズンは5月30日以降滑走禁止に |
畳平に到着する手前に鶴ヶ池雪渓が広まります。岐阜県側で唯一滑走が認められているエリアです。畳平から歩いてすぐの場所にあることから、初めてお越しになったスキーヤー・ボーダーの方にも安心してお勧めできる場所です。例年6月下旬まで滑走可能です。
しかし、滑走エリアに向かう箇所の雪解けが激しく、バーンが途切れてしまっているため、滑走は5月30日で禁止となりました。例年より一ヶ月近く早い状況で、近年まれにみる雪解け状況です。
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